医療イメージ病院検索サイトQLifeを運営するキューライフは2009年10月26日、新型インフルエンザの流行が医療機関の現場に及ぼす影響について、現場となる内科の医師に対して行ったアンケート調査の結果を発表した。それによると、「新型または季節性インフルエンザのワクチン接種」に関して、医師サイドがもっとも望んでいることは、単独項目では「ワクチン供給量の増加/充足」であることが分かった。その一方、複数項目にまたがる内容としては情報面への要望が多く、「マスコミへの不信・不満感」や「医療上層部の情報伝達・決定・内容の不適切さ、不的確さ」を指摘する声が相次ぐ結果となっている(【発表リリース】)。



今調査は2009年10月20日-23日の間にインターネット経由で内科医師に対して行われたもので、有効回答数は300人。男女比は84対16で、日本の医師数における男女比とほぼ同じ。年齢階層比は40代42.4%・30代26.0%・50代24.6%などで、日本の医師数比率と比べると40代の割合が多く、20代・60代以降が少なめとなっている。

新型インフルエンザ、及び季節性インフルエンザに対するワクチン(※「予防」に用いる医薬品であり、特効薬で無ければ治療薬でも無い)摂取に関し、医師サイドが政府に望んでいることにつき、自由記載をしてもらった。その上でコメントを分析し、多数の意見が寄せられた用件につきその意見を述べた人数をカウントして、用件毎に蓄積した結果を割合で示したのが次のグラフ。もっとも多くの意見が集まったのは「ワクチンの供給量を増加/充分に」で、1/4の医師がこの意見を述べていた計算になる。

「新型または季節性のインフルエンザのワクチン接種」に関して、あなたが国に対して最も望むことは何か
「新型または季節性のインフルエンザのワクチン接種」に関して、あなたが国に対して最も望むことは何か

単独項目では「ワクチン供給量の問題」がトップに挙がっているが、概要的なまとめ方をすると冒頭でも一部触れているように、いくつかの問題が浮かび上がってくる。

・ワクチン供給量の問題
・国や厚生労働省の情報量不足と不徹底、不明瞭さ
・上部意思決定機関に現場の声が入っていない
・情報伝達の不足
・マスコミの(マイナスの点における)問題

「ワクチン供給量の問題」という物理的・ハード的な問題はさておくにしても(実はこれも、かつて季節性インフルエンザワクチンを徹底的・不必要なまでにマスコミが糾弾したおかげで需要量が激減し、国内生産可能量が激減したのが遠因)、その他の問題はすべてソフト的なものであることが分かる。他にもワクチンに対しては「接種の義務化」「ワクチンの無料化・費用補助拡大」などさまざまな意見があるが、これは医師によって意見の相違が大きいようだ。

・医療上層部の
情報提供不足、不徹底、不明瞭さ
・マスコミが報道の体をなさず
むしろ事態悪化に貢献している
元リリースには具体的なコメント例も多数挙げられている。現場医師らの切実で胸が張り裂けんばかりの叫びが、目の前に飛び込んでくるかのような錯覚を受ける文言が多く見受けられる。特に医学的見地などの事由によるものでは無く、気まぐれ・希薄な政治的要因・省庁内の対立によるもの(生命に関する事柄であるにも関わらず、だ)で重要事項がコロコロと変えられるのだから、なおさらである(直近では医療従事者や妊婦へのワクチン接種回数が2回・1回・2回(妊婦のみ)と転々と変更された)。

また、【職場や学校の混乱の押しつけ・マスコミの扇動……医療機関が感じる新型インフル患者の特徴】でも伝えているが、マスコミが「報道」の役目を果たさず、逆に事態を悪化させる事例が多いことにいらだちを感じる医師サイドの声も大きい。自由回答から類似項目を抽出したにも関わらず、「マスコミの情報規制を」「正確で明瞭な情報を”マスコミより先に”医療現場に伝達」という意見が出る時点で、正常な状態では無いと判断されてもおかしくは無い。中には「未確定な情報を流した場合に、受診者の行動の責任を取って頂けるシステムを報道機関側に求めたい。むろん法的責任追及も行っていきたい」という極めて強い意見も見られるほどである。

このような意見が挙げられると、必ず「報道の自由」という御旗を立てて反論する向きもある。が、「自由」と「自由奔放」とは別物であり、「自由」には「責任」が伴うもの。それを十分以上に再認識すべきであろう。その事を忘れて「旗」を振り続けていたのでは、いつしか誰もその旗に目を向けなくなり、旗も汚れ、柄も折れてしまうかもしれないのだから。



スポンサードリンク