高齢者の入院イメージ厚生労働省は2010年3月16日、「受療行動調査の概況」を発表した。それによると入院患者の「今後どのような治療・療養をしてほしいか」という要望においては、「完治するまで今いる病院に入院していたい」とする回答がもっとも多かった。全体で51.9%がそれを望んでいる。次いで「自宅から通院で治療・療養」がついている。年齢階層別で見ると、歳を経るほど通院希望者が減り、「完治まで入院」「介護施設で治療・療養」が増える傾向が見られる(【発表リリース】)。



今調査は全国の医療施設を利用する患者について、受療の状況や受けた医療に対する満足度等を調査することにより、患者の医療に対する認識や行動を明らかにし、今後の医療行政の基礎資料を得ることを目的に行われたもの。調査期間は2008年10月21日から23日の3日間。調査方法は調査票の配布と回収(一部郵送による提出あり)。有効回答数は15万4185件、うち外来患者は10万0946人、入院患者は5万3239人。

当方(不破)自身も入院中に小耳にはさんだのだが、最近は特に高齢者で「自宅から通院が可能なまでに回復したにも関わらず、完全に治療・療養が済むまで入院し続けたがる患者が多い」傾向があるという。半ば介護施設と同じような応対を受けるため、それに近い感覚で病院を認識してしまうのだそうな。その分病院の病室は回転率が落ちるため、なかなか空き室が取れない状態がしばしば発生するという。

今回取り上げる項目もそれに関連した事項。入院患者を対象に、今後の治療・療養の希望について尋ねたものだが、46.5%が「完治するまで入院継続を望む」と回答した。一方で「自宅から病院や診療所に通院しながら、治療・療養したい」人は22.7%に留まる結果となった。

↑ 入院患者の今後の治療・療養の希望
↑ 入院患者の今後の治療・療養の希望

疾病の内容や患者本人の各種事情によって状況は多種多様、一概に「この選択肢がベスト」ということはない。あくまでもこれは平均的な意味での数字に過ぎない。とはいえ、完治まで入院を望む人が半数近くもいるのは事実。

これを年齢階層別で見ると、やはり高齢層になるほど入院継続や介護施設での治療・療養を望む人が増える傾向にある。

↑ 年齢階級別にみた入院患者の今後の治療・療養の希望
↑ 年齢階級別にみた入院患者の今後の治療・療養の希望

特に一番左の「完治するまで-」の項目がキレイに右肩上がりになっていること、「自宅から病院や-」が右肩下がりになっていることから、高齢者ほど「自宅からの通院を嫌い、完治するまで入院を続けたい傾向」であることが分かる。また、右肩上がりは「介護を受けられる施設などで治療・療養したい」も同様。

このアンケートからだけでは「なぜ」は分からないが、原因についていくつかの推測ができる。一つは冒頭でも触れたように、「介護施設と病院を同一視していること」。一部の病院では待合室が集会場・寄り合い所のような状況になっていることを考えれば、理解もできる。

一つは通院時の困難さ。自宅から病院に通うというプロセスそのものが困難である、あるいは苦労する場合、入院した方が負担がかからないという考えによるものだ。【歩きは1キロ、自転車は3キロ……普段の生活で行ける距離】によれば歩いて行ける距離は1キロ弱、ということだが、治療中の身の場合は身体の負担なども考えればもう少し短いものとなる。その範囲内に該当する病院があれば話は別だが、そうでなければ通院よりも入院継続を望むのも理解できる。

とはいえ、病院の施設もマンパワーも無尽蔵にあるわけではないのも事実。何か良い解決策はないものだろうか。



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