インフルエンザ定点観測【東京都感染症情報センター】は2010年4月21日、2010年第15週(4月12日-4月18日)時点での東京都内医療機関におけるインフルエンザ(季節性・新型双方合わせた)の疾病報告数定点観測データを公開した。報告数は前週と比べてやや減少、先週に続き2ケタの値に留まっている。絶対数としては通常のインフルエンザ流行時の終息時期同様の値を示しており、直近では事態は沈静化していると見て良い(【定点報告疾病集計表・週報告分データ】)。



まずは感染症名を「インフルエンザ」(新型インフルエンザ+季節性インフルエンザ)に設定し、「5年間比」をクリックした上で「更新」をした結果が次のグラフ。

東京都における「インフルエンザ」の週単位報告数推移(2010年15週目も含めた過去5年間)
↑ 東京都における「インフルエンザ」の週単位報告数推移(2010年15週目までも含めた過去5年間)

数週間前から発表データが2010年のものに更新されているため、最新データは赤色に違いはないものの、一番左に移行している。数字の動きとしては数週間来継続して減少を続けた後、ゼロ前後で推移している(青丸で囲った部分)。報告数そのものも少なめで、定点あたりの人数はほぼゼロに近い状態にまで近づいている(観測数合計13に対して定点数は287。定点数あたり平均は0.0453)。直近においては「新型も含めたインフルエンザ」の増加の時期は過ぎ去り、現在は収束状態に等しいと断じてよい(※専門家による言及ではないことに注意)。もちろん報告数がゼロになったわけではないので、注意を要する状況には違いないものの、過敏に反応するほどのものではない。昨年パターンを考慮すると、このまま30週くらいまではゼロ付近をうろうろするものと思われる。

各週の報告数全体における若年層の割合は、学校生活という特殊な(そして感染がおこりやすい)閉鎖環境で過ごす時間が長いことから、流行時は特に20代までが多かった。しかしその割合は最新データでは、ここ数週間の傾向同様に、報告絶対数が少ないので数字上のぶれが生じているため、あまり参考にはならない。あくまでもデータの連続性を持たせるための、儀式的レベルでしかないこともあり、高齢者の比率が多少増えていてもさほど気にすることは無い。

東京都におけるインフルエンザの報告数(年齢階層別、該当週合計に占める割合、2009年1-6週と27-53週、2010年15週まで)
↑ 東京都におけるインフルエンザの報告数(年齢階層別、該当週合計に占める割合、2009年1-6週と27-53週、2010年15週まで)

東京都におけるインフルエンザの報告数(年齢階層別、2009年27-53週と2010年15週、積み上げグラフ)
東京都におけるインフルエンザの報告数(年齢階層別、2009年27-53週と2010年15週まで、積み上げグラフ)

一枚目のグラフと合わせて動向を眺め見る限りでは、新型インフルエンザが従来のインフルエンザを「食った」、あるいは同一化した現象の影響として、今年度は例年より早く「(新型も含めた)インフルエンザの流行」は終焉を迎えているように見える。

以前から繰り返しお伝えしているように、感染拡大の場となりやすい教育機関では「日常の健康管理のためにも」うがいや手洗いを忘れずに行うこと、十分な睡眠と栄養管理で身体の抵抗力を強固なものとしておく、体調不良時には「電話で連絡を入れて相談した上で」医療機関におもむくなど、季節性インフルエンザ同様の対応を「確実に行う」「繰り返し行う」ことの大切さを強調しなければならない。季節性インフルエンザですらその流行時期は過ぎてしまったが、対インフルエンザだけでなく風邪などにも有効な一連の行動を習慣化させるためにも、そして健康維持の目的でも、これらの行為は継続した方が良い。

昨今ではワクチン周りをはじめとし、新型インフルエンザのパンデミック宣言に関する疑問符を投げかける報道が、外電を中心に相次いで目に留まる。要は「大げさすぎた」「神経過敏」というものだ。果たしてその批判が正しいものか否か、過去のパンデミックの事例(先のスペイン風邪など)を見る限り、まだ早いのではないかというのが正直な感想ではある。あるいは保険と同じ考えで「大事に至らなくて良かった」という見方をしておいた方が健全ともいえる。

さて定点観測・報告をしている一連の記事だが、報告数が1ケタを記録した時点で一時中断をする予定。ただしデータの取得は続け、2ケタに復帰した時点で非連続的な報告を(注意喚起的な意味合いで)行おうかと考えている。あるいは昨年流行の気配を見せ始めた30週前後まで様子を見るという考え方もある。読者諸氏のご意見をいただければ幸いだ。