「SAT119」あらゆる財産を奪い尽くす災害として、身近に起き得るものの一つが「火災」。【自動火災感知設備の設置率は45%・この5年で倍増へ】にもあるように火災感知設備の普及率は高まりを見せているし、消火器や防火用水の備えをしている人も多いはず。しかし一方で、目の前に突然大きな炎が姿を見せた時、慌ててしまい消火器の操作が頭からすっぽり抜けてしまったり、子供しかその場にいない場面もありうる。そんな時に役立ちそうなアイテムが、今回目に留まった『投げ消すサット119エコ』なる消火用品(トリガー記事:【情報屋さん】)。




↑ 投げ消すサット119エコ。
↑ 投げ消すサット119エコ。

この「投げ消すサット119エコ」は、【ボネックス】が開発、製造している消火器具。いわゆる「投てき型」の消火弾で、利用方法は「保護カバーから本体を取り出し」「火元に向かって投げつける」だけ(【会社の解説ページ】)。火元に落下して本体のアンプルが割れて中身(リン酸アンモニウムや重炭酸アンモニウムなど)が飛び出すと、

・水分蒸発作用で燃焼物が冷却される
・消火剤からアンモニアガスが発生し、燃焼連鎖反応を抑える
・消火剤から炭酸ガスが発生し、燃焼面の酸素を遮断する
・消火剤に含まれている「発火点を上げて燃えにくくする成分」が再燃防止効果を発揮

などの効用が発揮され、消火が果たされることになる(これらの成分は人体には影響は無いとのこと)。本体のアンプルが割れなければ中身が飛び出ず、消火の役割を果たさないため、布団などが燃えている場合は、そのそばにある壁や床に当てる必要がある。また、使える対象は普通の火災(木や紙などが燃えている)で、天ぷら油などの火災や、電気火災などには使用できない。

「投げ消すサット119エコ」が優れているのは、その消火性もさることながら、「持ち運びに便利」「使用方法が簡単(投げるだけ)なので、子供やお年寄り、焦ってしまうような状況でも利用が可能」という点にある。端的に表現すれば「機動力・運用性の高さ」というところ。実用性の高さから動画などでも解説されているように、東京消防庁でも一部の部隊で実際に導入されている。

実際、普段から十分に訓練していても、いざ目の前に炎を目にすると、どうしたらよいのか分からなくなってしまう場面は十分に考えられる。本当に簡単な操作方法で作動するはずの消火器も、手間取らずに使えるという自信は(正直当方(不破)自身にも)無い。そのような場面で「バッグから取り出し、火元に向けて投げ込むだけ」という消火弾の類があれば、安心してより確実に使えることは容易に想像が出来る。

↑ 使い方。アンプルの中身を取り出して水で薄め、杓子で火元に振りかけて使うこともできる
↑ 使い方。アンプルの中身を取り出して水で薄め、杓子で火元に振りかけて使うこともできる

この消火弾「投げ消すサット119エコ」、ネットなどで個人ベースでも購入が可能。また、消防法で定められた防火対象物に対して、普通火災用消火器を消火能力単位で同じ数値分だけ「投げ消すサット119エコ」に置き換える事が出来る(具体的には消火器1本で「投げ消すサット119エコ」5つ分)。消火器5本分で計算すると割高感は否めないが、いざという時慌ててしまいがちと自認している人や、消火器を使いづらいと思われる人がいる場所に備えておくと、色々と安心できるに違いない。

使用風景余談になるが、この「投げ消すサット119エコ」とほぼ同じコンセプトの「投てき型消火弾」、当方も昔考えたことがあった。水入りのペットボトルをたき火に入れたところ、そのボトルが溶けだして水が流れ出て火が消えたのを見たのがきっかけで、「ドイツのじゃがいも潰し型手榴弾のような投てき型にして、火のあるところに消火弾を投げつければ」というものだ。もちろん「子供の思い付き」ということで、いつしか忘れてしまったが、今から考えてみれば惜しかったかな、という感じはちょっとだけある(笑)。

また、この「投げ消すサット119エコ」だが、もう少し容器を頑丈なものにして、持ち運び可能なロケットランチャーで撃ち上げられるようにして、遅延信管などで中身が飛び散るようにすれば、普段の消防車では届かないような高い場所(ビルなど)や、消防士がたどり着けない難所にある場所の火災にも対応できるかな、と素人考えもある。すでに実用化されているかもしれないが……。