がん検診日本能率協会総合研究所は2011年2月4日、がんと免疫などに関するアンケート調査結果を発表した。それによると調査母体においては、がん発症時に心配する事柄としてもっとも多くの人が答えた項目は「治療費(経済的負担)」だった。7割強の人が治療費の心配をしている。「死」や「痛み」がそれに続いており、がんという病気そのものに対する心身上の負担よりも、その治療で発生する経済的負担に大きなプレッシャーが存在しているのが分かる(【発表リリース、PDF】)。



今調査は2010年12月21日から27日にかけて20-69歳の男女に対してインターネット経由で行われたもので、有効回答数は1000人。男女比は1対1、年齢階層は20代から60代まで10歳区切りで均等割り当て。

【日本人の「3人に2人が『がん』になる」「2人に1人が『がん』で亡くなる」・がんの2015年問題とは】【「日本人の死因トップはがん、中でも肺がんが多い」知らない人は6割】などにもあるように、統計上でも「がん」は身近な病気。今調査母体でも6割近くの人が「自分もがんを発症する可能性がある」と認識している。

↑ 将来自分ががんになる可能性
↑ 将来自分ががんになる可能性(再録)

それでは仮に、自分が実際にがんを発症した場合、どのようなことを心配するのだろうか。複数回答で聞いたところ、最多回答率を得た項目は「治療費(経済的負担)」だった。72.3%もの人が治療費の高さを気にしていることになる。

↑ がんになった場合に心配する事(複数回答)
↑ がんになった場合に心配する事(複数回答)

発症本人の物理的なダメージである「死」や「痛み」よりも、治療の際に生じる経済的負担への心配が大きい。逆に考えれば「死」や「痛み」に対する恐れ・心配は経済的負担よりも小さいことになる。早期発見・早期治療を心がけること、昨今の医療技術の進歩により、がんは以前と比べれば「不死の病」のイメージからは遠ざかる状況にある。その現状がある程度浸透しているからこそ、5割程度に留まっているのだろう。

男女別に見ると、男性が治療時に休業しなければならないこと、それを理由に失職してしまうかもしれないことへの心配が女性の2倍近くに達している。それをのぞけば「死」以外の項目で女性の方が心配する人が多いのが分かる。元々男性よりも女性の方が「がん」に対する警戒心は強い傾向にあるが、この調査項目の結果を見るとその警戒心が「自分自身や自分の身の回りで発生しうる負荷の大きさ」に起因していることがうかがえる(女性の場合は特に「乳がん」などへの関心が高いのだろう)。

闇雲にただ恐れてしまうのは問題だが、発症によるリスクを十分認識するのは悪いことではない。リスクを知っていればこそ、予防策や対策を真剣に行えるからだ。「がん」はテレビや雑誌の向こうにある病気では無く、自分の身の回りの病気でもあることを再認識してほしいものである。



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