テレビが怖い総合医療メディア会社のキューライフは2011年3月28日、大震災の医療現場への影響実態調査を発表した。それによると調査母体の医師においては、約1/3が「強い不安の訴え」をする患者が出て向精神薬の処方を新たに行った・増えたと回答していることが分かった。「強い不安」の具体的内容としては「余震が続く」が最も多いが、次いで「悲惨な映像が繰り返される」が入っている。直接被災を体験していなくとも、映像で精神的な影響を受けた患者が少なくないことが確認できる(【発表リリース】)。



今調査は2011年3月24日から25日にかけて関東地方(茨城県のぞく)の医師に対してインターネット経由で行われたもので、有効回答数は252人。勤め先区分は診療所開業医82人・病院勤務医170人。

今調査は東日本大地震(東北地方太平洋沖地震)の本震発生から2週間経過した時点で行われている。その時点で「過去10日間」で地震とそれに伴う災害(震災)に関連すると思われる「心因的な病状悪化」が見られる患者が居るか否かを聞いたのが次のグラフ。震災における心理的な影響は子供だけでなく大人、むしろ大人の方が多い現状が確認できる。

↑ 過去10日間で震災に関連すると思われる「心因的な病状悪化」が見られる患者は居るか
↑ 過去10日間で震災に関連すると思われる「心因的な病状悪化」が見られる患者は居るか(再録、全患者に対する比率ではなく、回答医師において「そのような患者が確認できるか否か」の比率であることに注意)

さらに地震に関連する要因で強い不安を訴え、トランキライザーなどの向精神薬を新たに処方した、または増量処方した患者の有無を聞いたところ、約1/3の医師が「居る」と答えていることが分かった。

↑ 地震関連に絡む状況変化が原因と見られる「強い不安の訴え」があり、トランキライザーなど向精神薬を新たに・増量して処方した患者はいたか
↑ 地震関連に絡む状況変化が原因と見られる「強い不安の訴え」があり、トランキライザーなど向精神薬を新たに・増量して処方した患者はいたか

こちらも「患者の1/3が増量・新規処方」ではないことに注意。それでも相当数が該当するであろうことは容易に想像ができる。

そして増量・新規処方をした患者がどのような不安を抱いていたのかを複数回答で聞いた結果が次のグラフ。

↑ 地震関連に絡む状況変化が原因と見られる「強い不安の訴え」があり、トランキライザーなど向精神薬を新たに・増量して処方した患者の、「強い不安」の具体的内容(複数回答)
↑ 地震関連に絡む状況変化が原因と見られる「強い不安の訴え」があり、トランキライザーなど向精神薬を新たに・増量して処方した患者の、「強い不安」の具体的内容(複数回答)

この比率は「増量・新規処方をした患者がいる医師」に対するものではなく、調査母体全体に対するものであることに注意。つまり今調査における回答医師全体のうち2割近くが「自宅・勤務先で余震が続くことを起因とした、精神的な不安を訴えた患者に対し、向精神薬を新たに・増量して処方した経験を持つ」と答えていることになる。

注目したいのは「震災への漠然とした不安」「被災地域に肉親知人がいる」「原発・放射能トラブル」より上、起因の二番目に「悲惨な映像が繰り返される」がついていること。これに関しては[被災映像、幼い心に傷 身近の出来事だと錯覚 睡眠障害や食欲不振に 専門家「極力見せないで」]などでようやく報じられるようになったが、地震直後から懸念・指摘されている問題である(が、主に報道を行う「4マス」が加害側であることから、報じられることはほとんど無い。指摘されても「報道の自由」を錦の旗として振り回すのが常)。

同調査別項目の「心因的な病状悪化」の具体的病例でも、テレビ映像などを起因とする病状悪化が複数確認できる。節度・倫理を守らず、自由のみを振りかざし義務を守らない行動は、自由によるものではなく「自由奔放」でしかないことを、関係者は改めて認識してほしいものだ。


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