カンゾウ日本漢方生薬製剤協会は2011年10月1日、中国産原料生薬の価格(購入ベース)に関する初の調査を実施し、その結果を公開した。それによると2006年から2010年までの4年間で、中国から直接輸入している漢方薬の原料生薬で使用量が上位の30品目において、価格が約1.6倍に上昇していることが分かった。日本で使用される漢方薬の原料生薬のうち8割強は中国産ということもあり(【2008年度における原料生薬使用量等調査報告書、PDF】)、今後販売価格の上昇も懸念される(【発表リリース、PDF】)。



今調査は2011年1月4日から2月4日までに、日漢協会会員会社74社に対して行われたもので、対象となる生薬は「2008年度生薬使用量調査」で使用量が多かった上位30品目など。

今調査結果によると、中国から直接輸入している原料生薬で使用量上位30品目の価格の推移は、2006年を100とし各社データを加重平均すると、価格指数は2008年が126・2010年が164となり、4年間で約1.6倍の価格上昇が認められた。

↑ 原料生薬(使用量上位30品目)の価格指数(2006年を100)(中国から直接輸入している原料生薬)
↑ 原料生薬(使用量上位30品目)の価格指数(2006年を100)(中国から直接輸入している原料生薬)

使用量上位30生薬すべての価格が上昇しており、最も価格上昇が著しかったものでは2010年に4倍強という指数を示している。使用量の多い生薬では、例えば2010年でカンゾウ(使用量1位)が122、シャクヤク(同2位)が147、ケイヒ(同3位)が129という結果となっている。またこれらの生薬の日本での使用量における、中国からの輸入傾注度はカンゾウ100%・シャクヤク96%・ケイヒ81%(2008年度ベース)で、中国からの生薬の価格上昇が起因であることが分かる。

また価格指数を使用量上位30生薬に絞り、個々価格指数の2008年・2010年における分散度合いを示したのが次のグラフだが、直近の2010年では2008年と比べ、高い指数側に全体的な移行が生じているのが分かる。

↑ 価格指数毎の原料生薬数推移(中国から直接輸入している原料生薬)
↑ 価格指数毎の原料生薬数推移(中国から直接輸入している原料生薬)

上位30品目以外でも、価格が2倍を超えると会員会社から回答のあった生薬が21品目も存在。輸入量の多少に関わらず価格の上昇が進んでいることがうかがえる。

協会側では今回調査結果で確認ができた大きな値上がりの原因として、会員各社からの実情聞き取り内容から、「資源の減少」、「中国国内の需要増(食品も
含む)」、「人件費・栽培加工費の上昇」、「天候(干ばつ・水害など)」など、複合的な要因を挙げている。また今回の調査結果では2010年秋の収穫品の価格が未反映の生薬もあることから、本年度も同様の調査を行い、価格動向の推移を確認するとしている。

2008年度ベースでは使用生薬248品目のうち113品目・45.6%(品目種類数ベース)は中国のみを生産国(輸入元)としている。【ツムラ、漢方薬の原料生薬「甘草」の大規模栽培に成功】などでも触れているが、中国では砂漠化防止のために薬草の輸出に対する各種制限を強化しており、価格は漸増状態にある。一方で健康志向の増加や高齢化などを受けて、日本国内でも漢方薬の需要は増加中。今後の価格動向が気になるところではある。