2024-0118文部科学省は2023年11月28日付で同省公式サイトなどにおいて、2022年度版の【「学校保健統計調査」】の確定報を発表した。今回はこの公開値を基に、子供達のむし歯(う歯)の現状を確認していくことにする。幼稚園から高校生自身の人はもちろん、それらの年頃の子供がいる保護者にとっても、気になる値に違いない。
まずは学校種類別の比率。「処置完了」はむし歯を持っていたがすでに治療が終了した人。「未処理歯有」は未だ治療していない、あるいは治療中のむし歯がある人を指す。例えば幼稚園児では全体の10.05%が「むし歯だった」、14.88%が「現在むし歯持ち」となる。

↑ むし歯の人の割合(学校種類別)(2022年度)
↑ むし歯の人の割合(学校種類別)(2022年度)

興味深い動きとしては、中学校で一度むし歯率が減少する傾向が確認できる。これは後述の年齢別で明確に判断できる数字が出てくるが、理由としては「乳歯が永久歯に入れ替わる過程で、むし歯・処置完了の歯もろとも抜けてしまった」が考えられる。実際、過去の報告書でもその可能性を示唆しており(「9歳から12歳において割合が減少するのは、乳歯が生え替わることが影響していると考えられる」と記載されていた)、道理の通る解説ではある。

続いてこれを年齢別に細分化した上で確認したのが、次のグラフ。

↑ むし歯の人の割合(年齢階層別)(2022年度)
↑ むし歯の人の割合(年齢階層別)(2022年度)

10歳-12歳ではむし歯率が明らかに減少する。これは前述したように、乳歯から永久歯に入れ替わる過程で、むし歯まで一緒に抜けてしまうのが主要因。しかしせっかく歯の入れ替えで下がったむし歯率も、17歳までにはほぼ元に戻ってしまう。そして一度生えた永久歯を乳歯の時と同じように抜いてしまうと、再び生えてくることはないので、「むし歯だから」との理由だけで抜くのははばかられる(無論治療の最終手段として「抜く」選択肢は存在しうるが、生え代わりはない)。たとえば髪の毛のように、何度でも生え変わるのなら便利なのだが。

最後に男女別で現状を確認する。

↑ むし歯の人の割合(男女別・学校種類別)(2022年度)
↑ むし歯の人の割合(男女別・学校種類別)(2022年度)

小学校までは男性の方がむし歯率が高いが、中学校以降はむしろ女性の方が高くなる。中学生以降は男性より女性の方が成長が早いことで知られているが、それが要因なのだろう(つまり「乳歯から永久歯への生え代わりの際に、むし歯ごと抜いてしまう」究極の対策カードを早めに使い果たしてしまう)。

あるいは食生活上で甘いモノ好きの特性が中学生以降、女子に顕著に表れるのかもしれないが、今データからだけではその判断は不可能である。ただ、トリビア的に覚えておくと、ちょっとだけ得した気分になれる。もちろん、むし歯そのものは無い方がよいに越したことはないのだが。



思った以上に高いように見えるむし歯率だが、実はこれでも経年データで見ると、かなりの減少傾向を見せている。幼稚園児では9割超の値を見せる年もあったほど。つまりその当時は、幼稚園児が10人いたらそのうち9人は現在むし歯、あるいはむし歯だったことを意味する。これについては機会を改めて、その流れを追っていくことにしよう。


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