2024-1230お正月の料理としては欠かせないお餅(もち)に関連し、それをのどに詰まらせて窒息状態に陥る事故が相次いでいる。毎年の話ではあるが、注意喚起として東京消防庁では2024年12月16日に関連する特集ページ【餅などによる窒息事故に注意!】を公開し、注意喚起を行っている。高齢者がトラブルに遭遇する機会が多々あることから、高齢者に対する注意事項が多いのが特徴である。

圧倒的に多い高齢者被害


今件は2024年の公開のため2024年分の統計データは反映されておらず、主に2019年-2023年における過去5年間の値(東京消防庁管轄内、以下同)を元に、「餅」およびそれに類する「団子」「大福」など粘り気の強い食品が喉(のど)に詰まったことによる窒息事故について解説している。過去5年間では毎年100人前後がこの窒息事故で救急車によって医療施設に運び込まれているが、多くは12月から翌年1月に集中しており、年末年始のお餅料理(磯辺焼き、お雑煮、餡子餅など)に起因していることがうかがえる。また、ここ数年救急搬送人員が少なくなっているのは、注意喚起の成果が出ているのだろうか。一方、2021年で急激な落ち込みを見せたのは、新型コロナウイルスの流行で帰省が自粛され、お雑煮などによるお餅を食べる機会が減ったのが一因だと思われる。

↑ 餅などに起因した窒息事故による救急搬送人員(東京都、人)
↑ 餅などに起因した窒息事故による救急搬送人員(東京都、人)

↑ 餅などに起因した窒息事故による救急搬送人員(東京都、月別、人)(2019-2023年累計)
↑ 餅などに起因した窒息事故による救急搬送人員(東京都、月別、人)(2019-2023年累計)

この搬送者のうち7割強は「中等症(生命の危険は無いが要入院)」以上の病症で占められており、搬送時の状況が深刻なのが確認できる。

↑ 餅などによる事故における初診時程度別割合(東京都)(2019-2023年累計)
↑ 餅などによる事故における初診時程度別割合(東京都)(2019-2023年累計)

死亡:初診時に死亡が確認されたもの

重篤:生命の危険が切迫しているもの

重症:生命の危険があるもの

中等症:生命の危険はないが、入院の必要があるもの

軽症:入院の必要がないもの

また冒頭で触れた通り、窒息事故による搬送者の大半は高齢者で、2019-2023年累計に限れば全搬送者の9割強となっている。

↑ 餅などに起因した窒息事故による救急搬送人員(東京都、年齢階層別、人)(2019-2023年累計)
↑ 餅などに起因した窒息事故による救急搬送人員(東京都、年齢階層別、人)(2019-2023年累計)

とりわけ70代後半から80代に多く事案が発生していることが分かる。

傾向と対処


東京消防庁では以前の注意喚起で高齢者、そして乳幼児の窒息事故が多い理由について「個人差がある」としながらも、

・乳幼児……主に臼歯がなく食べ物を噛んですりつぶすことができないことや、食べながら遊んだりする傾向にあるため、窒息事故が発生しやすい。

・高齢者……一般的に、かむ力や飲み込む力が弱くなり、だ液の分泌量も減少し、食物が詰まりかけた時に咳をする反応が弱いなどの理由により窒息事故が発生しやすくなる。

と解説。そして餅をはじめとした粘着性のある食品による窒息事故を防ぐための注意事項として

・食品を小さく切るなど、食べやすい大きさにする。

・急いで飲み込まず、ゆっくりとよくかみ砕き、だ液と混ぜてから飲み込む。

・乳幼児や高齢者などと一緒に食事をする際は、食事の様子を見守るなど注意を払う。特に高齢者や介護を要する方は、粥などの流動食に近い食物でも窒息を起こすことがあるため食事の際は目を離さない。

・介助が必要な人に餅などを食べさせる時は、「横になった状態」「あおむけに寝た状態」では食べさせないようにする。

・餅などを食べる前には水やお茶、汁物を飲んで喉を湿らせる。

・食事中は遊ばない、歩きまわらない、寝ころばない。

・いざという時に備え、応急手当の方法を習得しておく。

などを挙げている(応急手当の方法はリリース該当部分の後半に「窒息の応急手当」の項目が設けられ、詳しく説明されている)。

今件では特に高齢者の餅問題を提起しているが、【増える独り身・高齢者のみ世帯…高齢者がいる世帯の構成割合(最新)】などにもあるように、今後は一人暮らしの高齢者世帯が今まで以上に増加する傾向を見せているため、リスクはさらに増加することが予想される。行政当局は今後増加するこの「高齢者・餅窒息事故」に対し、今まで以上に積極的な姿勢で臨むことが求められよう。


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