東京消防庁は2013年12月26日、高齢者の入浴中の「おぼれ」に関する注意喚起を行った。「風邪やインフルエンザなどの冬季に流行する病気の発生」「忘年会、新年会などにおける急性アルコール中毒」「餅を喉につまらせたことによる窒息事故」と共に冬季に救急要請が急増する原因として挙げており、「STOP! 高齢者の事故シリーズ」の一つとして特記されている。今回は普段あまり見聞きする機会が無い、だからこそ油断しがちな「入浴中の溺水」(溺水…気道内に水が入って窒息すること)について見ていくことにする(【発表リリース:STOP!高齢者の入浴中の「おぼれ」を掲載しました。】)。



日常生活の中では一番くつろげるという人も多いのが、入浴の時間。しかしその入浴時においてすら、事故のリスクは存在する。東京消防庁管轄においても、2012年時点で過去5年間に発生した、65歳以上の「住宅の風呂」「銭湯」における「溺水」による搬送者は1997人に登る。

↑ 住宅の風呂や銭湯で発生した溺水の月別搬送人員(2008-2012年)(東京都、65歳以上)
↑ 住宅の風呂や銭湯で発生した溺水の月別搬送人員(2008-2012年)(東京都、65歳以上)

12月をピークに、1月から3月までの搬送者数の多さが目に留まる。寒い時期に暖を取るため長湯をしている、風呂に入る頻度が高まるのが一因と考えられる。

また世代別に見ると圧倒的に高齢者が多いのが分かる。2012年では溺水による搬送者のうち65歳以上の占める割合は89.8%に達する。

↑ 住宅の風呂や銭湯で発生した溺水の年代別搬送人員(2008-2012年)(東京都)
↑ 住宅の風呂や銭湯で発生した溺水の年代別搬送人員(2008-2012年)(東京都)

リリースでは高齢者に良く見られる、心臓、肺の慢性疾患や高血圧症など、複数の疾患を抱えている場合、浴室温と湯温の差による血圧の急激な変化が入浴時に溺水の危険となる可能性を示唆している。そしてこれらを起因とする事故を防止するため、「高齢者の入浴時や小さな子供が浴室の近くにいるときなどは、一人だけにせず、声掛けや目を離さないようにしましょう」としている。

また他にも「湯温は39-41度ぐらいで長湯をしない」「脱衣所や浴室の室温が低くならない工夫をする」「食事直後や深夜には入浴しない」「気温の低い日は夜早めに入浴する」「心肺の慢性疾患や高血圧症を持つ人は半身浴が望ましい」などと説明している。

特に「脱衣所の室温」に関しては油断をする人が多い。浴室との温度差が激しいため、急激な温度の変化に体調が付いていかず、倒れる可能性がある(風呂から出る場合は「溺水」にはならないが、生命の危機に陥ることに違いはない)。高齢者が居る世帯では、脱衣所に小型の温風機やストーブを置くなどの工夫が求められよう。

「溺水」は発覚時において、対象者がすでに生命の危険にさらされている場合が多い点でも注意が必要となる。

↑ 住宅の風呂や銭湯で発生した溺水の程度別搬送人員(2008-2012年)(東京都)
↑ 住宅の風呂や銭湯で発生した溺水の程度別搬送人員(2008-2012年)(東京都)

実に8割強が搬送時に重篤か死亡している。入浴中の溺水(特に自宅の風呂)では、対象者単独で入浴している状態で事態が発生し、呼吸や脈がない状態で発見されることが多く、身近な人が一刻も早く心肺蘇生を実施することが必要となる。

これからますます寒さが増してくる時期。入浴機会も増え、長湯をしてしまう事例も出てくる。特に乳幼児や高齢者が居る世帯では、くれぐれも溺水リスクを頭に入れ、気を付けてほしいものだ。


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