
増え続ける投入病内科医と精神科医、減る外科・小児科医・産婦人科
元データとして用いたのは厚生労働省の【医師・歯科医師・薬剤師調査】。これは2年おきに行われている調査で、現時点では2022年分のものが最新のデータとして公開されている(2024年4月25日更新)。まずは入手可能なもっとも古い値である1994年のデータを基準とし(糖尿病内科(代謝内科)のみ公開値で一番古い2008年分が基準値)、主要診療科別医師数の推移をグラフ化する。各診療科別の医師の増減動向が把握しやすい図となっている。また合わせて直近2022年時点における主要診療科の医師数(重複カウント)も掲載しておく。なお医療施設従事医師総数は重複計算ではない。

↑ 医療施設従事医師数(一部診療科、診療科は複数回答、各科の1994年を1.0とした時の推移、糖尿病内科のみ2008年が1.0)

↑ 医療施設従事医師数(一部診療科、複数回答)(2022年)
一見して把握できるのは、総数もあわせ多くの科の医師数が増加している一方で、外科と産婦人科・小児科が減少している実態。ただし産婦人科については社会問題化したこともあり、2006年を底に持ち直しを見せている。また内科は2008年を底にする形で、少しずつ数を回復しつつある。
グラフ中にも記しているが、2008年に診療科名の定義が細分化されたこともあり、調査項目も変更されている。それによる差異が2006年までと2008年以降には生じている。内科は2004年から減少していたとはいえ、2008年の急落はこの調査項目の変更によるところが大きいと見てよい。
糖尿病内科は基準値が唯一2008年分のものであるにもかかわらず、その上昇度合いは今回取り上げた診療科の中では精神科を超えてもっとも高い値を示している。元々数が少なかったのも要因だが、同時に需要が急増した結果でもある。
とりわけ下落が著しい外科・小児科の減少が再確認できるのが次のグラフ。1994年から2022年における変移を計算したものだが、小児科は2割、外科は3割強も減少している。

↑ 医療施設従事医師数の変化(1994年→2022年)
ただしこちらも上記にある通り、診療科名の定義変更による誤差が(特に外科で)生じている可能性に留意しておく必要がある。糖尿病内科や精神科が需要に応える形で増加しているのをはじめ、多くの科で増加している。それゆえに小児科、外科の減り具合が目立つ。
ちなみに「複数回答」ではなく「主たる診療科」で答えてもらった場合の医師「数」は、次の通りとなる。

↑ 医療施設従事医師数(主たる診療科名)(2022年)
圧倒的な内科の多さ、整形外科や眼科の意外な多さが見て取れる。
都道府県別産婦人科医の密度を探る
昨今では特に問題視されている産婦人科・産科および小児科について、その資格を持つ主たる医師数(その診療科のみの医師と、複数の診療科に従事しているが主には対象となる診療科に従事している)を、それぞれの都道府県別で、産婦人科・産科は「15-49歳女性人口10万人比で」・小児科は「15歳未満人口10万人比で」算出したのが次のグラフ。例えば産婦人科・産科では東京都は56.8人なので、産婦人科を利用する可能性が高い15-49歳女性10万人あたり、該当医師は56.8人いることになる。逆算すれば該当人口約1761人あたり産婦人科医師が1人。

↑ 15-49歳女性人口10万人対「産婦人科・産科」資格取得医療施設従事医師数(2022年)

↑ 15歳未満人口10万人対「小児科」資格取得医療施設従事医師数(2022年)
該当人口数比率で産婦人科・産科医が一番多い都道府県は鳥取県。次いで長崎県、徳島県が続く。少ないのは埼玉県で32.8人となり、もっとも多い鳥取県と比較して2倍強の開きがある。とはいえ、その鳥取県でも人数は68.4人。産婦人科医1人あたりで逆算すると約1462人にもなる。
また小児科は鳥取県がもっとも多く184.8人、次いで東京都の163.1人。一番少ないのは山口県の91.2人で次いで千葉県の92.3人。鳥取県は産婦人科・産科でも最上位にある。多様な事情がありそうな雰囲気だ。
たびたび報道されることで、あるいは自分自身や周辺の人が実感して状況を把握している人も多いだろうが、特に産婦人科の医師数の少なさは社会問題化している。その産婦人科や外科では、一部の過剰・偏向報道がきっかけで風当たりが強くなり、訴訟リスクが急増し、いくら医師(を志す者)本人の志が高くとも「現状では続けることはかなわない」と医学の道を断念したり別の診療科へシフトする人の話が見受けられる。昨今では外科でも似たような話もある。
もっとも尊い「生命の誕生」にたずさわる者たちが、半ば「いらぬ茶々」、さらには加害側の名誉欲のために仕事を追われ、あるいは志を断念させられる状況は健全では無い。一部の声高な人のためでは無く、出来る限り多くの人のため、そして正しい選択をしている人のため、しかるべき人が働き、動ねばならない。
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