2023-1011厚生労働省は2023年9月15日付で同省公式サイトにおいて、人口動態調査における人口動態統計(確定数)の2022年版の概況の更新版を公開した(【令和4年(2022)人口動態統計(確定数)の概況】)。今回はこの発表値などを基に、日本の出生率と出生数の動向についてグラフ化を行い、状況を推し量ることにする。

漸減する出生数、一時持ち直しの気配を見せた合計特殊出生率


具体的なデータは上記の通り「人口動態統計確定数」から取得。それ以外も同調査の過去データから抽出する。戦中戦後の混乱期を除き、出生数は1872年以降、出生率は1947年以降は毎年、それ以前は1925年以降飛び飛びのものを用いることになる。

まずは単純な出生数。

↑ 出生数(万人)
↑ 出生数(万人)

↑ 出生数(万人)(2001年以降)
↑ 出生数(万人)(2001年以降)

戦前はほぼ横ばいで推移。戦後になり、戦地から帰還した人たちによる第一次ベビーブーム、そしてその時期に生まれた子供達が成人化した上での第二次ベビーブーム(その間に丙午(ひのえうま)による減少、1966年の落ち込みも確認できる)、その後の急速な減少と、前世紀の終わり頃からの減少度合いの緩やかさへのシフトが見て取れる。

直近2022年は77万759人で前年比はマイナス4万863人。記録が確認できる1918年以降では、2016年に初めて100万人を割り、以降7年連続しての100万人割れである。

一時期増加に転じた合計特殊出生率、その理由は


続いて合計特殊出生率。声に出して読むと舌をかみそうな用語だが、これは「一人の女性が一生のうちに出産する子供の平均数」を示している。単位は特に無し、あるいは人。単純計算でこの値が2.0なら、夫婦2人から子供が2人生まれるので(男性は子供を産まない)、その世代の人口は維持されることになる。計算の際には各年齢(世代)の女性の出生率を合計して算出される。実際には多様なアクシデントによる減少があるため、人口維持のための合計特殊出生率は2.07から2.08といわれている(これを「人口置換水準」と呼ぶ)。

↑ 合計特殊出生率
↑ 合計特殊出生率

↑ 合計特殊出生率(2001年以降)
↑ 合計特殊出生率(2001年以降)

戦前のデータはほとんどつぎはぎだらけで、その間を自動補完したため、不自然な直線部分が多い(出生数などは1918年から存在するが、合計特殊出生率の最古の値は1925年となっている)。確定値の限りでは1925年には5.11、1930年には4.72との値が確認できる。戦前最後の1940年は4.12人。その時代の出生率が維持されれば、女性は一生で4人強の子供を産む計算になる。

戦後になると第二次ベビーブームの1970年代がほぼ2.1台で推移し、人口置換水準2.08を割り込む年もあったが、その後は盛り返しを見せていた。しかし1974年に人口置換水準2.08を割り込んだ以降は漸減が続いている。最近になって上昇傾向を見せ始めていたが、直近となる2022年は前年2021年から減少し、1.26。2021年に続き前年比でマイナスの動きとなり、2015年までの増加傾向から転じて減少傾向を示していることが確認できる。

2015年までの一時的な上昇傾向に関しては色々な原因があるが、そのもっとも大きなものが、高齢出産の増加。次のグラフは過去8年間にわたる各年齢階層別合計特殊出生率の推移を示したものだが(各年齢階層の値を全部足すと、その年の合計特殊出生率となる)、「25-29歳」までの年齢階層が漸減し、それ以降の層が漸増しているようすが分かる。ただし2016年以降は30-34歳層、2018年以降は35-39歳層でも前年比で減少に転じており、これが合計特殊出生率の減少につながっている。

↑ 合計特殊出生率(女性年齢階層別)
↑ 合計特殊出生率(女性年齢階層別)

さらに長期の範囲を示したグラフやその分析は【日本の高齢出産状況】にある通り。高齢出産化の原因は晩婚化の進行、医療技術の進歩、価値観の変化などによるものだが、母胎の負担をはじめ多様なメリット・デメリットがあり、今でも賛否両論があることを記しておく。



少子化の原因は多様におよび、複数の要因が複雑に絡み合った結果である(一つの事象が一つのみの原因に帰することなど滅多にない)。晩婚化(【ますます伸びる交際期間と縮む夫婦間年齢差…日本の夫婦事情の推移(最新)】でも解説している通り、初婚年齢の上昇)、未婚化、女性の高学歴化、住環境の問題、経済状況の悪化、社会風土の変化などが個別の理由として挙げられている。

この「少子化問題」を解決するには、まずは一つひとつの絡み合った要因を解きほぐし、その上で出来ることから解決していかねばならない。同時に社会全体のさまざま問題を解決していくための、(他の方面にひずみを起こし得る)安易で短視的な手法ではなく、中長期的な戦略眼の上での対策が求められよう。


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