2022-0923厚生労働省は2022年9月16日に同省公式サイトで、人口動態調査における人口動態統計(確定数)の2021年版の概況の更新版を公開した(【発表ページ:令和3年(2021)人口動態統計(確定数)の概況】)。今回はこの発表値などを基に、「高齢出産化」の実情を確認していくことにする。
平均値的な高齢出産化に関しては、すでに【初婚年齢は高齢化とともに分散化…初婚年齢推移(最新)】などで図式化されることにより、明らかにされている。平均初婚年齢が上がり、それに伴い出産年齢も押し上げられる形である。

↑ 平均初婚年齢と母親の平均出生時年齢(年区分間隔が時間経過通り、歳)(再録)
↑ 平均初婚年齢と母親の平均出生時年齢(年区分間隔が時間経過通り、歳)(再録)

今件では冒頭の通り、厚生労働省の「人口動態統計(確定数)の概況」に添付されている統計表から、母親の年齢別における、各年の出生数動向を見ていくことにする。

グラフ作成に際しては直近分だけでなく、過去の「人口動態統計」の公開値を用い、2000年以降は毎年、それ以前は5年おきの値を抽出。さらに戦前の値に関しては、【国立社会保障・人口問題研究所の人口統計資料集】の「IV.出生・家族計画」「表4-7」から抽出した。こちらの値は古いものは1925年で、それ以降は5年おき。ただし1945年は戦後の混乱期もあり、1947年に繰り延べ。以降1950年、1955年と通常パターンに戻っている。

それらのデータを取得した上で、各年の「母親の年齢別出産数」を単純に積み上げグラフの形にしたのが次の図(年代区分の時間的間隔が異なることに注意)。多数を占める年齢階層区分4つには、具体的な年齢が分かりやすいように年齢区分を示したプレートを配してある。さらに各年の出生数合計に対し、どれだけの比率を占めているのかを年齢階層区分別に見たグラフも併記する。

↑ 母の年齢別に見た出生数(戦前込み版、人)
↑ 母の年齢別に見た出生数(戦前込み版、人)

↑ 母の年齢別に見た出生数(戦前込み版、各年全体比)
↑ 母の年齢別に見た出生数(戦前込み版、各年全体比)

実は戦前においても、現在ほどではないものの高齢出産はごく当たり前の話で、しかも出生数そのものが多いことから、高齢出産による出生数は現在をはるかに上回る数となっている。例えば1925年においては一般定義に基づいた高齢出産(35歳以上の女性による出産)数は42万8299人。直近となる2021年の24万3311人の約1.76倍にあたる。

これは【日本の平均寿命の推移】などで解説している通り、戦前・戦中までの日本においては(他国同様)衛生面や社会インフラ、医療技術の点などで現在と比べてはるかに死亡リスクが高く、その結果平均寿命が短いため、出産が国策的に奨励されていたことが要因(「産めよ増やせよ」「富国強兵」あたりのキャッチコピーを知っている人も多いはずだ)。また生物学的・本能の面でも、人口の維持増大のためには健康である限り高齢でも出産をする社会的性質も後押ししていた。いわば「多産多死」の状態だったことになる。

出生数そのものが減っているのは【日本の出生率と出生数】などで解説している通りだが、高度成長期以降は若年層(赤系統色)による出生が減り、その上の層(青系統色)が増えているのが、このグラフからはよくわかる。出生数の変化は単なる減少ではなく、若年層による出生数の減少と、中年層による出生数の漸増という状況変化を伴ってのものである。1970年では20代までで7割強だった出生数が、直近2021年では4割を切る状態にまで減少している。なお昨今の高齢出産化は晩婚化や医療技術の進歩、社会観の変化などが要因となっている。

余談になるが、各年齢階層別の出生率と、それを積み上げることによって算出される合計特殊出生率の推移は次の通り。こちらは「国立社会保障・人口問題研究所の人口統計資料集」上にはデータが無いため、「人口動態統計」からの取得値のみのグラフとなる。

↑ 母の年齢別に見た合計特殊出生率(内訳)
↑ 母の年齢別に見た合計特殊出生率(内訳)

視点は違えど、やはり「20代による出産減少」「30代以上による出産増加」が見て取れる。それとともに2006年以降漸増していた合計特殊出生率は、内訳として高齢出産によるところが大きいことも確認できる。

なお直近2021年は前年と比べて合計特殊出生率が0.0269ポイント減少している。この動きの内訳は次の通り。

↑ 合計特殊出生率(前年比)(2021年)
↑ ↑ 合計特殊出生率(前年比)(2021年)

高齢出産化が進んでいるが、具体的には30代半ばまでで大きく減少している。昨今の情勢を如実に表しているようで興味深い。



高齢出産に関しては母親の心身にかかる負担なども含め、さまざまな問題が指摘されている。同時に初婚年齢がかさ上げされる社会情勢ゆえに、時節の流れの上で仕方が無いとの意見もある。どの意見が正しいのかについて早急な回答が出せるわけではないが、社会現象の一端として認識するとともに、必要ならばしかるべき対応をとるべきだろう。


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