2020-1103厚生労働省は2020年10月27日、「令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要」を発表した。それによると2019年における成人(20歳以上)の一日あたりの食塩平均摂取量は男性で10.9グラム・女性で9.3グラムであることが分かった。男性は30代から50代・女性は20代から50代にかけて漸増し、男女とも60代で摂取量が大きく増加しており、年を取ると濃い味付けを求める裏付けと解釈できる動きを示している。また食塩摂取量は中期的に見ると、減少の動きが見受けられる(【国民健康・栄養調査】)。


今調査の調査要件は先行記事【一日の平均歩数は男性6794歩・女性5942歩(最新)】を参照のこと。

以前【幼児の甘味間食、1日3回以上は2割足らず・保護者の配慮のある無しで大きな違いも】でも紹介した「健康日本21」(第二次)では男女とも成人の目標食塩摂取量について、1日あたりの目標値を8.0グラム、厚生労働省の【「日本人の食事摂取基準」(2020年版)】では18歳以上男性は7.5グラム未満・同女性は6.5グラム未満(2020年版、1日あたり、ナトリウムの食塩相当量)と定めている。これを念頭に、次の年齢階層別の平均食塩摂取量などを見ればお分かりの通り、男女とも目標値を数グラムほど上回っており、食塩を過剰摂取気味であることが分かる。

↑ 食塩摂取量平均値(男女別・年齢階層別、グラム/日)(2019年)
↑ 食塩摂取量平均値(男女別・年齢階層別、グラム/日)(2019年)

男女別では労働強度の違いや体質的な問題から必要とされる・体が求める食塩摂取量にも差異が生じ、結果として男性の方が摂取量は多い。また年を取るに連れて味覚細胞が鈍化する(=同じ味付けでも薄味に感じる)ことで濃い味付けを求めるようになるため、食塩摂取量が上乗せされる。70歳以上でやや減るのは、健康への留意とともに、食事そのものの摂取量の減少などもあるものと考えれば道理は通る。

2003年以降の経年平均値を見ると、2005年に一度増加しているものの、それ以外はおおよそ減少し、2014年以降は横ばいとなっているのが分かる。

↑ 食塩摂取量平均値(グラム/日)
↑ 食塩摂取量平均値(グラム/日)

【日本人の塩分摂取量の推移】でも解説しているが、健康志向とともに食塩の摂取量はわずかずつ減少の傾向を見せている(一方で調味料の多様化と西洋化の傾向も確認されている)。この流れは今回のデータでもあらためて確認されたことになる。一方で2014年以降はあまり変化が見られない動きを示しているのには、留意を払う必要がある。

なお先行記事「一日の平均歩数は男性6794歩・女性5942歩(最新)」でも解説の通り、「国民健康・栄養調査」では2014年調査・2015年発表分から経年変化の一部データにおいて、年齢階層別の人口比によるデータのぶれを考慮し、年齢で大きな差異が生じる経年データに関しては、年齢調整を行った値を併記している。その動向が次の通り。

↑ 食塩摂取量平均値(年齢調整後、グラム/日)
↑ 食塩摂取量平均値(年齢調整後、グラム/日)

食塩摂取量が大きめになる高齢者に関する調整が入るため、そのまま平均値を算出した場合と比べてやや少なめの値が出るが、傾向としては変わらず。2005年をピークに漸減し、2014年以降は横ばいとなる動きが示されている。そして一つの目安となる8.0グラムを超えていることにも変わりはない。

身体の健康状態を維持するために必要な食塩量は労働条件・運動量・年齢、そして日々の状態によって大きく異なる。一概に上記で触れた値「男性7.5グラム未満・女性6.5グラム未満/日をクリアしないと体が変調を来たす」わけではない(例えば上記「日本人の食事摂取基準」(2020年版)によれば、小児(3-5歳)における基準量は男子3.5グラム未満、女子3.5グラム未満と記されている)。

ただし健康を維持する際の視点の一つとして挙げられる「食塩」を多量に摂取することは、健康にはマイナスとなることに違いない。目安としては十分以上に役立つものであり、今グラフを参考に、日頃の食生活における食塩の摂取について、今までよりもう少しだけ留意してほしいものだ。塩の利用量を少なくしても、美味しく味つけできる方法はいくらでもあるのだから。


■関連記事:
【カゴメからカロリー・塩分半分の「甘さひかえめカロリーハーフケチャップ」発売】
【ナトリウム 塩分量との関係を 正しく知ってる 人は5%】
【チャーハン・ラーメン・八宝菜……塩分が一番多いのは!?】
【シニアが日頃の食事で困ること、トップは「塩分調整」】
【味の素、塩分半分の塩「やさしお」を8月20日から発売】