森永乳業が2013年11月6日付で同社公式サイトで公開した、ノロウイルスに関する実態調査の結果によると、ノロウイルスについてもっとも関心が寄せられている事柄は「感染した時の対処法」だった。6割近くの人が同意している。次いで「予防法」「症状の重さ」などが続く。一方、ノロウイルスへの予防法として実践している事柄としては「石けんでの手洗い」「うがい」「食材の加熱処理」「手をアルコール消毒する」が続いており、予防法として有効と思っている事柄でも「石けんでの手洗い」「手のアルコール消毒」が続いている。しかし「アルコール消毒」は一部で認識されているような「絶大な効果」は望めない方法であり、それにも関わらず大いに有効であると考えられている状況が明らかにされている(【発表リリース:ノロウイルス感染経験8人に1人、20代が最多 効果がうすい対策を過半数が有効だと認識】)。



「ノロウイルスへの対処法、予防法を知りたい」積極的な防疫姿勢


今調査は2013年10月5日から6日に渡ってインターネット経由によって、20代から70代の男女1200人に対して行われている。男女比、10歳区切りの世代構成比は均等割り当て。子供ありの人は男性162人・女性150人。

ノロウイルスによる感染・発症事例は年を通して確認されているが、特に10月以降翌年の3月までの冬期に渡って多発している。

↑ 月次事件数年次推移。厚生労働省・ノロウイルスに関するQ&Aから抜粋
↑ 月次事件数年次推移。厚生労働省・ノロウイルスに関するQ&Aから抜粋

また今ウイルスに効果のある抗ウイルス剤は現時点では存在しないため、ノロウイルスによって発症した場合、対処療法のみに治療法が限定されている。体力の弱い乳幼児や高齢者、病症者は発症・重篤化リスクが高まるため、より高レベルでの警戒対応が求められる。

流行する冬の時期になると、報道で感染事例も多数報じられ、その実態の解説特集も組まれることもあり、関心は高まりを見せることになる。そのノロウイルスへの関心は「感染した時の対処法」にもっとも多く向けられており、55.8%の人が興味関心を抱いていた。

↑ ノロウイルスについて関心の高い事項(複数回答)
↑ ノロウイルスについて関心の高い事項(複数回答)

ほぼ同率で「予防法」が挙げられており、「感染は極力避けたい」「万一感染が確認されても正しい対処法を行い、被害を最小限に留めたい」という積極的な防疫姿勢が見受けられる。

現状の予防法・知識は「?」なところも


一方、具体的に予防策として実行していること、さらにしている・していないは別としてノロウイルス対策として有効だと思っていることを尋ねると、やや疑問符を浮かべざるを得ない結果が出ている。

↑ ノロウイルスの予防法として実施していること、有効だと思うこと(複数回答)
↑ ノロウイルスの予防法として実施していること、有効だと思うこと(複数回答)

ノロウイルスによる感染は経口感染によるものがほとんどで、それを起因とした食中毒の予防法としては「体そのものの抵抗力をつける」「食品の十分な加熱による殺菌」「調理器具や食品取扱者からの二次感染の防止」「十分な手洗い(石けんやアルコールそのものには失活化効果は無いが、ウイルスそのものを患部からはがしやすくする効果が期待できる)」「感染起因となりやすい吐物などへの接触を防ぐ」などが挙げられる(【厚生労働省:ノロウイルスに関するQ&A】)。つまりウイルスそのものを極力取りこまない、取り込んでも対抗できる体力をつけるという、対抗手段のみが有効とされる。

その観点では石けんでの手洗いやうがい、食材の加熱処理(食品の中心温度85度以上で1分以上の加熱実施により、感染性は無くなるとされている)は有効な手段ではあるが、加熱処理以外には失活化の効果は望めない。ところが昨今では「アルコール消毒をすれば確実に予防できる」との認識が一部で広まっているようで、高い「有効だと思う」の回答率が表れている。

またグラフ化は略するが、予防対策に本腰を入れる時期を尋ねた事例でも、27.6%が「流行し始めてから」と答えており、予防そのものへの気概はあるものの、対応知識の面で的外れ的なところがある人が多分にいることが確認できる。アルコール消毒でも何もしないよりは効用が期待できるが、一部で認知されているような特効薬的、絶大な効果を生み出すものではない。公的機関のサイトや医療機関が提供するパンフレットなどを基に、正しい知識で臨みたいものだ。


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