災害に備え、被害を最小限にとどめるための情報は、常日頃から望まれるものである。防災グッズや室内の耐震対策をしていない人にその理由を聞くと、少なからず「備えのための方法が分からない、情報が無い」との答えが返ってくる。それでは世間一般において、日頃からの防災知識や情報はどのようなルートで入手されているのだろうか、また今後はどのルートを重視したいと考えられているだろうか。内閣府が2014年2月10日付で発表した防災に関する世論調査を基に、確認していくことにする(発表リリース:【防災に関する世論調査】)。



テレビが一番、新聞二番、ラジオが続いて家族・知人


今調査は2013年11月28日から12月15日にかけて層化2段無作為抽出法で選ばれた人を対象に、調査員による個別面接聴取法で行われている。有効回答数は3110人。

防災全般に関する知識や情報を、どのようなルートで取得しているか。複数回答で聞いた結果が次のグラフ。ほとんどの人はテレビを介して入手すると答えている。

↑ 防災全般に関する知識や情報の入手先(複数回答、2013年11-12月)
↑ 防災全般に関する知識や情報の入手先(複数回答、2013年11-12月)

次いで多いのは新聞で55.1%、ラジオの31.0%が続く。いわゆる従来型4マスのうち3つまでが上位を占めている(残りの雑誌・書籍は8.0%ではるか下位)。

比較的信頼性の高い口コミルートである家族・知人は21.9%。そしてようやくデジタル系のウェブサイト・アプリが続く。公的機関としては国・地方自治体のパンフが17.1%で最上位。あまり頼りにはされていない。

このうち4マスの上位陣テレビ、新聞、ラジオ、そしてデジタル系のウェブサイト・アプリ、ソーシャルメディアについて、属性別に動向を見たのが次のグラフ。



↑ 防災全般に関する知識や情報の入手先(複数回答、2013年11-12月)(属性別)
↑ 防災全般に関する知識や情報の入手先(複数回答、2013年11-12月)(属性別)

テレビはすべての属性で押し並べて高い値を示している。一方、新聞やラジオは大都市圏、若年層では低い値に留まっている。これはそのまま各メディアの利用実態が現れた形と見て良い。

一方デジタル系では都市部、男性、若年層の方が高い値を示しており、新聞やラジオとほぼ逆転する属性傾向にあるのが分かる。これもまた、各メディアの利用実態がそのまま防災情報の取得ルート選択にも表れた形。特に20代におけるソーシャルメディアの利用率の高さには、目を見張るものがある。

「今後」も3マス優性、ウェブも期待大


それでは現在ではなく、今後重視したい防災情報・知識の入手先としては、どのようなルートを選ぶだろうか。

↑ 防災全般に関する知識や情報で今後重視したい入手先(複数回答、2013年11-12月)
↑ 防災全般に関する知識や情報で今後重視したい入手先(複数回答、2013年11-12月)

やはりテレビが群を抜き、新聞、ラジオが続く構図は変わらない。そしてウェブサイト・アプリがその次に続く点は、現状と比べると少々の違いを見せる。要は家族・知人からの口コミ情報は、今後の防災情報の会得ルートとしては、あまり重要視されていない次第である。

これを現状同様、3マスとデジタル系2つについて、属性別に動きを確認したのが次のグラフ。



↑ 防災全般に関する知識や情報で今後重視したい入手先(複数回答、2013年11-12月)(属性別)
↑ 防災全般に関する知識や情報で今後重視したい入手先(複数回答、2013年11-12月)(属性別)

現状と違い今後のルートでは、テレビでも属性別の差異が生じている。特に世代別において、若年層から中堅層にかけて減少、それ以降は大きな上昇の動きがあるのが興味深い。一方で新聞やラジオの動きは現状ルートと変わりはない。

デジタル系では現状同様、若年層、大都市、男性の方が回答率が高い。特にウェブサイト・アプリに対する期待度が高く、同時に世代間格差が大きいのが目に留まる。



防災情報・知識の啓蒙には取得ハードルを考えると、テレビや新聞、ラジオが適している。今後において重視するルートでも、その実情が表れている。一方で便宜性を考慮するとデジタル系のウェブサイト・アプリやソーシャルメディアの有益性も見逃せず、若年層には高い効果を発揮するものと考えられる。

今後デジタルツール、特にスマートフォンの普及に連れて、デジタル系ルートを活用する事例はさらに増加し、中堅層から高齢層にまで浸透していくことは容易に想像できる。それまでは世代間の情報格差に注意しながら、デジタル経由で防災情報を扱う配慮が求められよう。


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