医療技術の発達による寿命伸長、年金問題、労働市場の構造変化とも絡み、日本では定年退職の年齢に関する論議が盛んとなっている。アメリカでは制度的に日本のような定年退職の制度は無く、原則本人が働きたければ、心身の続く限り就労し続けることができる。それではアメリカの人達は、何歳ぐらいで今の勤め先を退職したいと考えているのだろうか。同国の大手調査機関Gallup(ギャラップ)が2014年4月28日に発表した調査結果【Average U.S. Retirement Age Rises to 62】で確認していくことにする。



今調査はアメリカ合衆国内に住む18歳以上の成人男女に対して2014年4月3日から6日にかけて、電話による通話インタビュー形式によって行われたもので、有効回答数は1026人。対象電話はRDD方式によって選ばれ、そのうち50%は固定電話、残りは携帯電話。調査結果は最新の国勢調査に基づいたウェイトバックが行われている。

今調査によると、直近の2014年4月において、現在就労している人たちが退職してリタイアしたいと考えている歳は平均で66歳。日本では平均的な定年退職年齢である60歳から65歳よりも上の年齢まで働き続けたいと考えている。一方で、調査対象母集団のうちすでにリタイアした人の平均退職年齢は62歳となり、現在就労者の希望年齢よりも4歳分若い。

↑ 希望リタイア歳と実際リタイア歳(米、平均、歳)
↑ 希望リタイア歳と実際リタイア歳(米、平均、歳)

ギャラップ社では今件の一連の調査以前にも何度か同様の調査を行っており、それによると実リタイアの年齢は1991年や1993年では平均57歳だったとのことである。また2002年から2012年の平均は60歳。それと比べて直近の値では62歳となっており、確実に少しずつだが年齢が上昇しているのが分かる。理由としては昨今の景気悪化に伴い、リタイア後の貯蓄をすり減らしてしまったことなどが理由として挙げられているとのこと。

また現職者によるリタイア希望年齢も少しずつ伸びている。そして昔から実リタイア年数と数年の差が数年分開いていることについて、特に若年層における老後の備えへの不安感が影響しているとの分析がなされている。

一方で若年層は、早期リタイア組の仲間入りをすることへのあこがれも抱いている。実現できるか否かはまた別の話だが、世代別に自身の希望するリタイア希望する年齢を聞いたところ、30歳未満では11%もの人が55歳未満で現役引退をしたいと答えている。これは全世代の中でもっとも大きな値である。

↑ 何歳ぐらいでリタイアしたいか(2014年4月、米)
↑ 何歳ぐらいでリタイアしたいか(2014年4月、米)

どの世代でも65歳以上まで働きたいとする意見が最多であることに違いはないが、30歳以下は他の世代よりも55歳未満でリタイアしたいとする意見も多い。報告書では若年層は引退後の金銭周りについて楽観視しており、それが原因なのではないかと説明している。

一方でギャラップ社では他の調査で投資・貯蓄性向を定期的に追いかけているが、それによれば昨今の投資家たちは非常に慎重な姿勢を示しており、貯蓄に熱心であるとしている。金銭的な不安が、リスクを避け確実な積み上げへと心境を揺れ動かしているのだろう。

また同社ではここ数年特に希望年齢と実年齢との間が縮みつつあることについて、ライフスタイルの変化や社会保障制度・退職金の変化を反映しつつある結果だと説明している。そして将来的には両者は極めて近い値を示すことになるだろうと説明している。希望年齢はほぼ横ばいで減少する気配がないことを考えると、大体65歳から66歳位にまで、実リタイア年齢が上昇していく、ということになるのだろうか。


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