定年退職後の高齢期に至っても職に就きたい理由の一つに、社会とのつながりを維持したいからという意見がある。収入の確保は二の次で、他人との触れ合い、コミュニティへの参加を果たし、一人ぼっちの状態を逃れたいとするものだ。同じ理由で収入とは関係なく、様々な社会活動(福祉活動を含む)に足を踏み入れ、世の中への貢献や他人との交流の中で、楽しい時を過ごしたり、自分の存在を再確認することを求める動きもある。今回は内閣府が2014年6月13日に公開した、高齢期に向けた「備え」に関する意識調査を基に、中堅層以降が考えている、高齢期に達した時の社会参加活動への想いについて、その実情を確認していくことにする(【発表リリース:高齢期に向けた「備え」に関する意識調査】)。



今調査は2013年11月28日から12月31日にかけて、層化二段無作為抽出法で選ばれた全国の35歳から64歳の人に、郵送配布・郵送回収方式で行われたもの。有効回答数は2707人。

今調査対象母集団に対し、回答者が高齢期になった際にどのような社会参加活動をしたいのかについて、複数回答で尋ねた結果が次のグラフ。これらは実際の社会参加活動の一部でしかないはずだが、それでもリストアップしてみると実に多彩なものがあるものだと感心させられる。

↑ 自分が高齢期になったらどのような社会参加活動をしたいか(複数回答)
↑ 自分が高齢期になったらどのような社会参加活動をしたいか(複数回答)

最上位の項目は「サークル活動・仲間と行う趣味・教養」で43.6%。盆栽や俳句などをはじめとした文化的活動が好例だが、昨今ではインターネットで知り合った者同士による旅行会の類もこれに該当するだろう。自治体などが定期的に行っている文化系の集会、講演会もあてはまると考えれば、随分と領域は広がっていく。それと共に普段何気なく素通りしている地域の掲示板で募集が行われている各種教室に、案外需要はあるのだろうとの推測もできる。

次いで多いのは「スポーツ・レクリエーション」で35.0%。そして「習い事」が32.4%。後者は料理教室や陶芸教室の類が有名どころ。さらに「地域行事への参加・手伝い」「町内会・自治会活動」が続く。地域のお祭りの手伝い、公共エリアのゴミ拾いや草刈り、さらには夜間の見回りなども含まれよう。

「特にない」「分からない」とする消極派は合わせても2割足らず。8割以上は何らかの形で社会参加活動をしたいと考えている。これは調査対象母集団全体に対する設問であることを考えると、実に積極的、意欲的であることが理解できよう。



回答者が高齢期に間もなく達する人ならともかく、まだ30・40代でもう少し先の場合は、今後社会がどのような変化を遂げていくか、自分がどのような立場に置かれるかががつかみにくく、これらの社会参加活動に参加できるか否かの断定は難しい。歳を経る過程で気が変わったり、行動性向に変化が生じるかもしれない。あくまでも現時点の状況での希望ということに注意してほしい。

ちなみに全体では低めの値に留まっていた「FacebookやLINE、ブログ等を通じた人との交流」を、性別・世代別に仕切り直したのが次のグラフ。

↑ 自分が高齢期になったらどのような社会参加活動をしたいか(複数回答)(「FacebookやLINEなどを通じて人と交流する事」の回答率)
↑ 自分が高齢期になったらどのような社会参加活動をしたいか(複数回答)

一部イレギュラーな動きがあるが、概して若年層ほど意欲は高い。デジタル系技術の世代進化の可能性として、「今バリバリに利用をこなしている若年層も、歳を経たら今の高齢者のように使わなくなる」「今の若い層は歳を経てもあまり利用スタイルに変化は無く、高利用率を示し続ける」2種類の可能性が示唆されている。今件の結果を見る限りでは、後者、つまり今の若い人たちは歳を経ても、デジタル系ツールの利用性向に大きな変化はなさそうである。


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