高齢化社会の進行と共に問題視されているのが、個々の高齢者における社会的な孤立問題。単に一人身世帯が増加するに留まらず、周囲に多数の住民が居住しているにも関わらず、ほとんど交流がないばかりに、存在すら認識されず、何かトラブルが生じても気が付いてもらえない、本人も助けを呼べるような人が居ないといった、いわゆる「コンクリートジャングル」的な状況に陥る事案が増加している。隣近所との交流を密にしていけば、そのリスクは軽減できるのだが、本人の意図や周囲の環境による要素も大きく、一筋縄ではいかない。今回は内閣府が2014年6月13日に公開した、高齢期に向けた「備え」に関する意識調査を基に、中堅層以降における自身の高齢期での近所との付き合いに関する希望について見ていくことにする(【発表リリース:高齢期に向けた「備え」に関する意識調査】)。



今調査は2013年11月28日から12月31日にかけて、層化二段無作為抽出法で選ばれた全国の35歳から64歳の人に、郵送配布・郵送回収方式で行われたもの。有効回答数は2707人。

調査対象母集団に対し、自分が高齢期に至った際、近所の人たちとどの程度の付き合いを望んでいるかを複数回答で聞いた結果が次のグラフ。7割以上は挨拶を交わす程度はしたいと考えている。

↑ 高齢期において自分は近所の方とどの程度の付き合いを望むか(複数回答)
↑ 高齢期において自分は近所の方とどの程度の付き合いを望むか(複数回答)

次いで多い回答は「困った時に助け合う」で57.5%。さらに「外でちょっと立ち話」が51.1%。ここまでが過半数回答の項目で、少なくとも隣近所に関してはまったく会話したことも無ければ見たことも無いでは無く、ある程度の知り合いで、いざという時は助け合いが出来る位の間柄ぐらいにはなっておきたいとの希望を持っていることが分かる。

次の項目「地域の行事・催し物に参加」「葬儀等の行事に参加」となると一気に親近感が高まる、というよりは「隣近所」のレベルでは無く、地域社会への本格参加という感がある。そのため、回答率はやや低めに抑えられている。

一方、「付き合いは要らない」との回答は1.1%に過ぎない。付き合うレベルは人それぞれだが、高齢期に至った際に孤立無援でも構わないとする人はごく少数、ゼロに近いということだ。

男女別、居住地別に見ると


これを回答者の属性別に見ると、その属性の特性が良く出ている結果が確認できる。まずは男女別だが、概して男性より女性の方が、積極的な近所付き合いへの姿勢がうかがえる。

↑ 高齢期において自分は近所の方とどの程度の付き合いを望むか(複数回答)(男女別)
↑ 高齢期において自分は近所の方とどの程度の付き合いを望むか(複数回答)(男女別)

ほぼすべての項目で女性の方が回答率が高く、特に高い社交性を有する項目には大きな差が出ている。この男女の意欲の差が、以前別調査の精査記事(【会話や近所付き合いから見る高齢者の「ぼっち」状態(高齢社会白書:2014年)(最新)】)で判明した、高齢者における男女の孤立状況の差に表れていると考えれば、非常にスムーズな理解が出来る。

↑ 会話の頻度(電話、電子メール含む)(該当項目以外は「毎日」「分からない」)(60歳以上対象、2011年)(高齢社会白書(2014年版))(再録)
↑ 会話の頻度(電話、電子メール含む)(該当項目以外は「毎日」「分からない」)(60歳以上対象、2011年)(高齢社会白書(2014年版))(再録)

また、都心部と地方における「近所付き合い」の考え方の違いも、回答者の現在居住地による区分結果から確認できる。

↑ 高齢期において自分は近所の方とどの程度の付き合いを望むか(複数回答)(居住地域別)
↑ 高齢期において自分は近所の方とどの程度の付き合いを望むか(複数回答)(居住地域別)

「挨拶を交わす」「困った時に助け合う」「外でちょっと立ち話」のような隣近所のレベルならばどの地域でも変わらない。大きな差を見せるのはそれより全体回答率が低い項目。特に「地域の行事・催し物に参加」「葬儀等の行事に参加」といった地域社会全体に係わるような話や、物理的なモノが介在するレベルのモノになると、得てして地方ほど回答率が高くなる。現在居住地域における「近所付き合い」の平均的な姿がどの程度のものなのか、その実情が透けて見えるようで興味深い。

高齢期に至って望む近所付き合いにおいても、都心部ほどドライで、地方ほど多様な方面で密接なやりとりを望むようになる。各情景をイメージすれば容易に理解はできる結果だが、数字化されて具体的な形で現れると、感慨深いものである。


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