
自然環境よりも生活レベルの維持を優先
今調査は2013年11月28日から12月31日にかけて、層化二段無作為抽出法で選ばれた全国の35歳から64歳の人に、郵送配布・郵送回収方式で行われたもの。有効回答数は2707人。
冒頭の言及にある通り、高齢期を迎えてからどのような居住環境で日々を過ごすのかは、ライフスタイルとの兼ね合わせもあり、大きな問題となる。国民健康・栄養調査の結果によると、70代以上の平均的な歩数は4000歩から5000歩となり、それより若い世代から大きく減退する。つまりそれだけ移動可能エリアが縮小することになる。

↑ 歩数平均値(20才以上)(歩/日)(2012年)(国民健康・栄養調査から)
一方で自然に囲まれた物静かな場所で日々を過ごしたいと考えている人もいる。それでは実際に、これから高齢期を迎える立場にある調査対象母集団においては、高齢期にどのような環境で過ごしたいと考えているのだろうか。択一で聞いた結果が次のグラフ。

↑ 自分は高齢期にどのような環境で暮らしたいか
6割強は「文化・商業施設が豊富で公共交通機関が充実」している場所を選択しており、「山村・漁村、離島、別荘地など自然環境に恵まれた所」を選ぶ人は1割強に留まっている。いわゆる郊外的な場所を意味する「車が移動の中心手段となる住宅地」は1割にも満たない。自然環境の充実よりも生活に密着した各種施設の充足を、多くの人は望んている。今後の人口展開予想に関して、特に高齢者が大都市に集中するであろうとする予想も納得がいく。
また、世間一般でよく話題に登る「海外移住」だが、少なくとも今件調査の限りでは、1.4%のみに留まっている。
女性は現実的、男性は理想論?
今件をいくつかの属性で仕切り直してみると、それぞれの特性が数字化されて興味深い。まずは男女別だが、男性よりも女性の方が生活のし易さを優先する傾向がある。

↑ 自分は高齢期にどのような環境で暮らしたいか(男女別)
男性は女性よりも自立しての生活に自信があるのかもしれない。男女間における孤立感の違いでは男性の方が「ぼっち」になりやすい選択をしがちであることも明らかにされており、その行動性向もまた、環境選択の判断材料となっているのだろう。
また現在住んでいる場所の環境を重要視する傾向もあるようだ。

↑ 自分は高齢期にどのような環境で暮らしたいか(現在居住都市規模別)
大都市圏に居住している人ほど「文化・商業施設が豊富で公共交通機関が充実」な場所を選びやすく、都市規模が小さくなるほど「山村・漁村、離島、別荘地など自然環境に恵まれた所」「車が移動の中心手段となる住宅地」を選ぶ人が増えてくる。それぞれの居住地域における人達の内部で順位を覆すほどの差は出ていないが、やはり「自分が今住んでいる場所が一番良い」とする想いが多分に作用しているようだ。
今調査項目では言及されていないが、概して密集地域ほど隣人と接する可能性が高くなる。民家もまばらな地域では、隣人に気軽に接する機会すら得られない。接する実機会はなかなか得られなくとも、少なくとも喧噪を肌身に覚えることは可能となる(石川啄木の「ふるさとの 訛なつかし 停車場の 人ごみの中に そを聴きにゆく」のようなものだ)。公的機関、商業施設などの生活関連施設の充実だけでなく、それらを求める他の人達の存在もまた、高齢期においては居住環境としての魅力なのかもしれない。
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