先進国病とも言われている高齢化・少子化に伴う人口の減少。この状況が進行している日本の現状について、内閣府大臣官房政府広報室が2014年10月20日に発表した、人口や経済などの社会の視点から見た「日本の将来像に関する世論調査」の結果から、多くの人は「少子化による人口減少は望ましくない」と考えていることが明らかになった。それでは具体的に少子化に伴う人口減少で、どのようなマイナス影響が生じ、その対策が重要であると考えられているのだろうか。今回はその点を確認していくことにする(【発表リリース:人口、経済社会等の日本の将来像に関する世論調査】)。



年金や医療費負担の社会保障が大問題


調査要件は先行記事の【歳を経るほど「日本は成長しなくてもいいヤ」「縮小もアリだね」と思う人が増える現実】を参考のこと。

冒頭で言及した通り、今調査対象母集団では多くの人が、少子化に伴う人口減少の現状を遺憾に覚えている。

↑ 日本の人口が急速に減少していくことについてどう思うか(2014年)(再録)
↑ 日本の人口が急速に減少していくことについてどう思うか(2014年)(再録)

それではなぜ懸念を持つのか、少子化でどのようなマイナス影響が生じ、その影響の中でもいかなる案件が重要だと考えているのか。複数回答で聞いた結果が次のグラフ。「その他」「特にない」「分からない」の項目は少数であることなどから、グラフからは除外している。

↑ 少子化が与えるマイナスの影響で特に重要だと思うのは何か(2014年)(複数回答)
↑ 少子化が与えるマイナスの影響で特に重要だと思うのは何か(2014年)(複数回答)

もっとも多くの人が重要だと考えている項目は、年金や医療費負担などの社会保障。7割強の人が同意を示している。後述するが20代ではいくぶん値は低いものの、若年層は一人当たりの負担増の観点で、高齢層は自分が受給するサービスの質の悪化を懸念し、不安を覚え、状況改善の施策が必要だと思う人が多くなる。

同様の観点で、生産者が減ることから、経済活力の減退に懸念を抱く人も多い。少子化そのもので直接影響が生じる「子育てに対する負担や社会支援のあり方など、家庭生活に与える影響」、「同世代の減少に伴う子供の健全な成長に与える影響」「学校の減少などに伴う身近な日常生活に関する影響」のような子供自身が受ける影響には、比較論ではあるが重要さを覚えていないことが分かる。

とはいえ男女別では子供により身近な女性の方が、子供に直接係わりのある項目で高い値を示している。直接関与する、あるいは身近な存在となるからこそ、強い危機感を抱き、影響の点で重要だと思うのだろう。

世代別、居住地域別に見ると……


これをいくつかの属性で仕切り直し、その動向を確認したのが次以降のグラフ。まずは回答者の世代別。

↑ 少子化が与えるマイナスの影響で特に重要だと思うのは何か(2014年)(複数回答)(世代別)
↑ 少子化が与えるマイナスの影響で特に重要だと思うのは何か(2014年)(複数回答)(世代別)

経済的な負担問題、子育てに関する社会の支援問題などの点では若年層が、過疎化の進行の点では高齢層が、より高い関心を抱き、懸念を有している。それぞれ他世代よりも大きな負担が生じる、自らに火の粉が降りかかるリスクを考慮し、重要だと考えていると見れば道理は通る。

やや意外なのは子供の健全な成長の点で、高齢者ほど重要視していること。過去における子供を取り巻く環境を良く知っているからこそ、子供の減少によって生じる学校の閉鎖などに問題を感じてしまうのだろうか。

回答者の居住地域別では、都市規模の違いによる傾向はあまり見られない。

↑ 少子化が与えるマイナスの影響で特に重要だと思うのは何か(2014年)(複数回答)(都市規模別)
↑ 少子化が与えるマイナスの影響で特に重要だと思うのは何か(2014年)(複数回答)(都市規模別)

かろうじて東京都区部で経済活力、家庭生活、社会活力の観点における懸念が強いように見受けられる。ただ、これも誤差の範囲と見なすこともでき、傾向として判断できるのはせいぜい「都市規模が大きくなるほど経済活力への懸念が強まる」ぐらいだろうか。人口が密集しているからこその都市部であり、そのメリットを多分に受けているだけに、それが失われる、損なわれることへの懸念が強いのも当然の話ではある。



単なる人口減少では無く少子化による人口減少は、一時的な世代間のバランスを大きく崩すことをも意味する。少数の生産人口が、多数の扶養人口を支える社会構造を生み出し、当然のごとく前者の負担増、後者の一人あたりの受益量の減少が生じてしまう。

それを防ぐ単純な、一番の解決策は、子供の数を増やすこと。ただし工場で生産する商品ではないのだから、間接的に子供が増えるよう、さまざまな環境整備を施すことが、その解決策となる。正しい知識による、社会的に子供を守り育てるような風潮の啓蒙、さまざまな育児世帯への支援制度の確立。成さねばならないことは山ほど存在する。

すぐに効果が出る類のものではないため、そして余計な邪念が入りやすい分野でもあることから、なかなか手掛けられる施策ではない。しかし戦略的観点で考察すれば、重点を置かねばならない話であることは言うまでもない。


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