自営業・自由業・個人事業主などのフリーランスの立場で働いている人は、いわば一人会社の社長のようなもので、かつ法人格を有していないことから(個人事業主は微妙ではあるが法人格は有していないことに変わりはない)、法人格の下で働く正社員と比べて、利用できない制度が多数存在する。厚生年金が良い例だが、他にも失業保険をはじめ各種保険制度も良く知られている。それではこれらの制度・保障について、フリーランスはその存在自身を知っているだろうか、また自分の立ち位置でも似たような制度が欲しい、あるいは同じ制度の適用を受けたいだろうか。ライフネット生命保険が2014年11月5日に発表した、フリーランスの働き方とお金に関する調査結果から、その心境を確認していく(【発表リリース:フリーランスの働き方とお金に関する調査】)。



今調査は2014年10月21日から22日にかけて携帯電話を用いたインターネット経由で、20歳から49歳の男女に対して行われたもの。有効回答数は1000。フリーランス500人・正社員500人。実施機関はネットエイジア。

次に示すのは、団体保険(法人格に所属する社員が任意で加入できる保険制度。低保険料で利用できる)、失業保険(失業した場合に特定の条件下において、一定の生活を維持するための金額を受け取れる給付金制度)、傷病手当金(健康保険に加入している人が傷病で業務に付けない場合に給付される手当。業務上などによるものは労災保険給付対象となる)の各制度について、正社員は適用される・利用できるが、フリーランスには存在しないことを知っているか、そして何らかの手立てがあれば利用したい・可能ならば制度として整備して欲しいと思うか否かを尋ねたもの。いずれも普段はいくばくかの負担が必要になるが、「万が一」の際には金銭的にも心境の上でも非常に頼りになる制度ではある。

↑ 会社員が利用できる各種制度や保証についてフリーランスには無い事を知っているか、欲しいと思う
↑ 会社員が利用できる各種制度や保証についてフリーランスには無い事を知っているか、欲しいと思うか

失業保険はいくぶん知名度が高めだが、列挙された3項目では大よそ6割から7割が知っており、同率程度で希望している。もっとも傷病手当金に関しては知名度と希望度の差がやや大きく、怪我や病気といったアクシデントにより仕事を受注できなくなり、無収入となる、仕事のつて・信頼度が減退することへの不安が強いことを認識させる。もっともフリーランスの場合、失業の定義は難しく、また保険と病症手当金制度は似たようなものとなる(支払い額の基準は異なるが。前者は入院治療にかかった経費、後者は普段の収入に対する補てん)ため、希望率は高くても、制度化はハードルが高い感はある。

他方、これらの制度のような「万が一」のための保険制度について、フリーランスと正社員それぞれに加入しているか否かを尋ねたのが次のグラフ。当然いずれの保険も、フリーランス・正社員双方とも加入は可能。ちなみに「就業不能保険」とは民間保険会社が提供している保険商品の一つで、病気やケガをして今の職が履行できなくなった時に保険金を受け取れるもの。入院だけに限らず自宅療養でも対象となりうるので、その柔軟性が注目されている(無論支払い条件は厳しい)。また損保でも「所得補償保険」という似たようなものがある。

↑ 各種保険に加入しているか
↑ 各種保険に加入しているか

死亡保険は5割強、医療保険は6割強、就業不能保険は1割未満の加入率。いずれか一つになると7割強となる。見方を変えるとフリーも正社員も2割強は、死亡保険にも医療保険にも入っていない。

同調査別項目ではフリーランスの加入率の少なさの理由として、保険料を払うだけの余裕が正社員よりも少ないことを挙げている。要は金銭的な問題が、「万が一」のためのリスク軽減の手立てへのハードルとなっている次第である。



業態によるがフリーランスでも安価な健康保険に入れる仕組みが存在する。漫画家界隈ではよく知られている、【社団法人日本漫画家協会】に加入することで入ることができる、文芸美術国民健康保険が良い例である。

その他にも保険をはじめとしたさまざまな「万が一」の際の備えの手法があるが、フリーランスは同じ業態でも横のつながりが薄い場合が多く、情報交換が成されにくいため、有益な情報のやり取りが行われないことが多々ある。特に金銭周りは微妙な話が多々あるため、話題に登りにくいのが一因。インターネットを検索するだけでも結構な量の情報があり、またその類の人向けの文献も多数出版されている。あるいはお金関連の専門家に相談するのもアリだろう。

面倒かもしれない、気恥ずかしさを覚えるかもしれないが、知識を得て備えておくことで、「万が一」に対する不安が減り、それがもし体現化した時にも大きな救いとなる。情報不足を覚えるフリーランスの人が居たら、ぜひまずは調べることから始めてほしい。


■関連記事:
【世帯主の年齢別貯蓄総額分布】
【20代 生命保険に 加入しない 最大理由は 「きっかけが無い」】
【年金や保険の「払い損」的な不公平感、世代間で大きな格差】



スポンサードリンク