先行記事【老衰による死亡者動向】において、厚生労働省の人口動態調査による人口動態統計(確定数)の2021年版となる値の概況(【発表ページ:令和3年(2021)人口動態統計(確定数)の概況】)を基に、いわゆる老衰による死亡者の動向を確認した。今回はこの派生的な話として、その老衰死が確認された場所の推移を見ていくことにする。要は自然死を迎えた人はどのような場所でその死に面することとなったのか、その傾向となる。統計情報としては年齢階層別による人数動向と同列レベルで存在するのだが、意外に注視されたことがない内容であると同時に、気になる話に違いなく、今回まとめることにした次第である。

最新値となる2021年の状況は


人口動態調査そのものの内容や、老衰、老衰死などの定義に関しては先行記事「老衰による死亡者動向をグラフ化してみる」を参照のこと。要は病態や事故、事件による死亡ではなく、細胞などの衰えで生命維持が不可能となり亡くなる自然死を意味する。

初めに確認するのは、最新値となる2021年分の老衰死に関して、場所別の動向。

↑ 老衰による死亡者(場所別・男女別、人)(2021年)
↑ 老衰による死亡者(場所別・男女別、人)(2021年)

男性より女性の方がはるかに老衰死の数が多いのは先行記事の通りだが、場所別では男性は病院が一番多く、次いで老人ホーム、自宅の順。他方女性は老人ホームがもっとも多く、次いで病院、自宅の順となっている。

某映画で有名となったシーンなどをはじめ、自宅における老衰死も容易に想起されるが、実際としては全体の2割足らずでしかないことも分かる。

経年推移を見ると


これをデータが取得可能な1999年以降について、数そのものを単純に推移として見たのが次のグラフ。なお男女で縦軸の区分が異なることに注意。

↑ 老衰による死亡者(男性、場所別、人)
↑ 老衰による死亡者(男性、場所別、人)

↑ 老衰による死亡者(女性、場所別、人)
↑ 老衰による死亡者(女性、場所別、人)

意外にも男女ともに一時期は自宅での老衰死は減少する傾向にあった。最近再び増加に転じているが、その動きもゆるやか(ただしこの1、2年では上昇度合いが大きなものとなっている)。それとは対照的に、病院や老人ホーム、そして絶対数こそまだ少数だが介護老人保健施設での老衰死が増加している。結局のところ、高齢者による一人暮らし世帯が増えたことで自宅での老衰死が環境的に想定しがたくなってきたことに加え、老衰死に至る以前に相応の体の機能劣化などが生じており、該当施設に長時間、あるいは常在する必要性が生じるようになったのが、これらの動きの理由だろう。

なお2020年では男女ともに病院の増加傾向が鈍化し(女性では前年比で減少すらしている)、自宅の増加傾向が加速化している。これは新型コロナウイルスの流行で医療事情が変化したことによるものだろう。

これを各年における比率換算を行ってグラフ化したのが次の図。

↑ 老衰による死亡者(男性、場所別、比率)
↑ 老衰による死亡者(男性、場所別、比率)

↑ 老衰による死亡者(女性、場所別、比率)
↑ 老衰による死亡者(女性、場所別、比率)

まず男性だが、自宅での老衰死比率が減り、その分病院、老人ホーム、介護老人保健施設が増えていく。しかし病院は2006-2007年で伸び率が止まり、最近では漸減。一方で老人ホームと介護老人保健施設は増加の一途。

他方女性は元から男性と比べて病院における事例比率が少なめで、その分老人ホームが多い。そして男性と同じく2006-2007年で病院の比率の増加の動きは止まり(しかもその時の比率は男性より低い)、その後の減少度合いも男性より大きい。介護老人保健施設や老人ホームの増加は男性と同じような動きだが、老人ホームの増加が著しく、直近年では4割を超えた。

元々男女で老衰における死亡の際の年齢動向、至るまでの健康状態に違いがあることは先行記事の通りだが、それが老衰による死亡時の場所の違い、比率の変化傾向の差異にも表れている。

高齢者の一人暮らし世帯が増加する中で、今後さらに自宅で老衰にて息を引き取る人が急増していくとは考えにくい。代わりにどの場所の値が増えるかは推測が難しいが、病院はここ数年の動きが鈍化していることから、そろそろ収容能力に限界があることも予想される。色々な面で考えねばならないことが多いのには間違いない。


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