法的な婚姻関係には無いものの、同棲などで事実上結婚しているのと同じような状態にあることを「事実婚」と呼ぶことがある。似たような表現には「内縁」があるが、「内縁」は多分に何らかの理由により婚姻届を出して法的に婚姻状態に成ることができない場合も含むのに対し、「事実婚」は当事者の意図による非婚姻下での同棲などを意味する。事実婚の男女間に生まれた子供は非嫡出子となり、婚姻状態の夫婦間で生まれた嫡出子とは法的な面での取り扱いの違いの他に、社会慣習上の違いもあり、すべての人の間で同じような認識が成されているとは言い難い。今回は厚生労働省が2015年10月27日に発表した人口減少社会に関する意識調査結果をもとに、その実情の一部を確認していくことにする(【発表リリース:「人口減少社会に関する意識調査」の結果を公表します】)。



今調査の調査要項に関しては先行記事の【理想の子供人数は2人、男性は歳を経るほど増加・女性は40代がもっとも少ない傾向】を参照のこと。

冒頭で解説の通り、法的な婚姻関係に無い事実婚の状態で、子供を持つことに関しては社会通念の上で賛否両論があることは否定できない。その実情を確認するのが、今回スポットライトを当てる部分。まずは調査対象母集団において、結婚状態の確認を行う。

↑ 現在の結婚状態(2015年3月)
↑ 現在の結婚状態(2015年3月)

全体では6割が結婚状態。3割強が未婚。事実婚は0.7%。他に死別・離別が数%ずつ。当然ながら若年層ほど未婚者が多く、歳を経るに連れて既婚者が増えていく。事実婚が高齢層で多いのは、同棲生活を楽しむことに満足し、法的な婚姻関係に無くとも構わないとする認識が両者間で生まれているのに加え、子供を新たに設ける事が無いと判断しているのも大きな要因だろう。

また当然ながら歳を経るにつれて男女ともに離別・死別が増えている。もっとも男女別では女性の方が離別・死別共に多い比率となっているのは興味深いところ。

このような状況を踏まえた上で、現在既婚以外の人、つまり現在事実婚か将来事実婚状態に成り得る人に対し(厳密には現在既婚の人でも離婚の上、事実婚状態になる可能性はゼロではないが、今件では考慮しない)、回答者自身が事実婚のままで子供を持つことについて抵抗があるか無いかを尋ねた結果が次のグラフ。

↑ 自分自身が事実婚のままで子供を持つことについて抵抗はあるか(2015年3月、現在未婚、事実婚、離別、死別状態の人)
↑ 自分自身が事実婚のままで子供を持つことについて抵抗はあるか(2015年3月、現在未婚、事実婚、離別、死別状態の人)

全体ではぼ4割が抵抗感無し、6割が抵抗感ありとなった。双方の強度を見ると抵抗感無しの強い意志表示は1割だが、抵抗感ありでは1/4に達しており、世間一般では抵抗感が強いことがうかがえる。この理由について今調査では特に尋ねていないが、冒頭で言及している通り、法的な保護の違いに加え、古くからの社会通念としての「子供は結婚した上で」との認識が、強いハードルとなっているものと思われる。

……のだが。属性別に状況を確認すると、いくぶんぶれは有るものの、むしろ昔のしきたりにはあまりこだわりを持たない若年層ほど抵抗感が強い。男性ではそれが顕著な形で表れている。女性は40代がもっとも柔軟性が高く、それより上の層になると少しずつ抵抗感が増えていく。

若年層で抵抗感が強いのは、子供を有する事のリアリティの高さに加え、法的庇護の面で婚姻下の子供と比べて差がつけられうることへの不安、懸念があるのが要因かもしれない。また、事実婚で子供を有するのなら、自分の歳なら結婚した方が良いのではないかとの判断もあるのだろう。

ともあれ今調査の限りでは、事実婚で子供を有することに関しては、抵抗感の無い人は4割に留まっていること、若年層ほど抵抗感が強いことは、覚えておくべきことに違いない。


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