2020-1228先行記事【男は中年・女は高齢ほど肥満者が多い法則(最新)】で厚生労働省が2020年10月に発表した「令和元年国民健康・栄養調査」の報告書を基に、男女・年齢階層別の肥満者ややせの者に関する状況の確認を行った。今回は精査期間をさらに拡大し、長期的な動向を見ていくことにする。数十年単位では肥満状況に変化は生じているのだろうか(【国民健康・栄養調査:調査一覧ページ】)。


BMIの定義や「肥満者」「やせの人」の区分は先行記事「男は中年・女は高齢ほど肥満者が多い法則(最新)」を参照のこと。「国民健康・栄養調査」では現時点で1980年から2019年分までの年次詳細データが公開されているため、この値を用い「肥満者」「やせの人」の比率動向を年齢階層別に確認していく。まずは男性。

↑ 肥満者(BMI>=25.0)の割合(男性、年齢階層別)
↑ 肥満者(BMI>=25.0)の割合(男性、年齢階層別)

↑ やせの人(BMI<18.5)の割合(男性、年齢階層別)
↑ やせの人(BMI<18.5)の割合(男性、年齢階層別)

中長期的には男性はどの年齢階層でも肥満者の比率が増えている。つまりふとましい傾向が強くなっていることが分かる。詳しく見ると30代から60代まではほぼ同じペースで、20代はやや緩やかに、そして70歳以上は今世紀に入ってから上昇率が大きくなっている。ただし70歳以上は平均寿命が延びるに連れて、より高齢層の比率が高まっているため、それも一因と考えられる(高齢層属性のより高齢化)。

やせの人においては、数字の上では60代から70歳以上で減少の動きがある。70歳以上に関しては肥満者同様に「より高齢の人」の比率の増加が一因だろう。しかし60代も減少している以上、高齢者におけるやせの人の割合が多少だが減っていると見て問題はなさそうだ。

続いて女性。

↑ 肥満者(BMI>=25.0)の割合(女性、年齢階層別)
↑ 肥満者(BMI>=25.0)の割合(女性、年齢階層別)

↑ やせの人(BMI<18.5)の割合(女性、年齢階層別)
↑ やせの人(BMI<18.5)の割合(女性、年齢階層別)

肥満者に関して30代以下は大きな動き無し(2015年の30代における大きな減少はイレギュラーの可能性が高い)。20代で最近上昇する気配も見せているが、もう少しようすを見る必要がある。他方40代から60代では20代の上昇とほぼ同じタイミングで減少の動きを示している。ただし60代ではこの数年で再び増加に転じているのが気になるところ。

やせの人の比率は20代では前世紀に一段上昇する形で増加した後は横ばい、30代から60代までは今世紀に入った前後あたりから増加の動きが生じている。女性のスリム化が進んでいる、一部で話題に上る過度なダイエット関連の話を想起させる流れではある。あるいは女性の就業率が高くなるに連れ、他人、中でも異性の目を気にして体格に注意を一層払うようになったとの説も、あながち的外れでは無い気がする。



健康的な状態、やせ型か肥満型かは単にBMIの大小だけで決まるわけではないので、今件動向はあくまでも指標の一つの変化でしか無いとの認識が無難。他方、長期的な流れとして、男性は肥満傾向、女性はやせ型にシフトしていると解釈できるのもまた事実。エネルギー摂取量は食生活・摂取栄養素の多様化とともに男女とも漸減していることと併せて考えると、興味深い話ではある。

ちなみに運動性向の指標となる「歩数平均値」の動向は次の通り(公開値は2003年以降)。

↑ 歩数の平均値(男性、年齢階層別、歩)
↑ 歩数の平均値(男性、年齢階層別、歩)

↑ 歩数の平均値(女性、年齢階層別、歩)
↑ 歩数の平均値(女性、年齢階層別、歩)

男女とも大きな動きは無し。少なくとも歩行に限れば、運動量の変化は生じていないようだ。


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