2022-0704人口構成の高齢化や医学技術の進歩に伴い、これまで以上に医療機関への注目が集まる昨今。周囲を見渡しても、自分自身も含め多数の人が入院経験を持つ、あるいは現状でも何らかの病症を抱えて通院している。今回は厚生労働省が定点観測的に実施している患者調査の最新版公開資料を基に、日本の入院・通院患者数の現状や動向を確認していくことにする(【発表リリース:患者調査】)。

入院患者数は約121万人、通院患者数は約712万人


今調査の直近分は2020年10月20日から22日のうち、病院毎に指定した1日(診療所は10月20日・21日・23日のうち指定した1日)において、各状況を確認したもの。歯科診療所(いわゆる歯医者さん)は外来のみの調査となっている。患者数は調査日当日の該当人数(抽出調査のため統計値は推計)、退院患者(の在院日数)は同年9月に退院した患者の平均値となる。なお2011年分は震災の影響で宮城県の石巻医療圏、気仙沼医療圏および福島県が未調査のため、それらの地域の統計値は未反映となっている。

最初に示すのは、特定日の患者数。入院患者は121.1万人、外来(通院)患者は713.8万人。入院患者は当然病院が多分を占めているが、外来患者は一般診療所の方が多い。それぞれの医療施設の規模や役割を考えれば、当然の結果ではあるが、数字として具体的にその裏付けが確認できる。

↑ 施設種類別推計患者数(万人)(2020年10月)
↑ 施設種類別推計患者数(万人)(2020年10月)

この詳細を次以降に見ていく。まずは入院患者の年齢階層別動向。

↑ 施設種類別推計入院患者数(年齢階層別、万人)(2020年10月)
↑ 施設種類別推計入院患者数(年齢階層別、万人)(2020年10月)

ほぼきれいな形で年を取るに連れて入院患者数は増えていく。年齢の区切りは5年単位であることから、単なる人口数の比率以上に、高齢ほど入院機会が多くなることが分かる。特に65-69歳と70-74歳で大きく増加を示すのは、老化による上昇の他に、退職した上での緊張感からの離脱や、退職後に時間が取れたことを受けて精密検査を受け、結果として入院による治療を行う事例などがあるのだろう。

ピークは80-84歳。それ以降は減少していくが、90歳以上に限定しても16.0万人もの入院患者がいる。

続いて外来患者数。

↑ 施設種類別推計外来患者数(年齢階層別、万人)(2020年10月)
↑ 施設種類別推計外来患者数(年齢階層別、万人)(2020年10月)

入院と比べ外来の場合は利用ハードルが低いことに加え、歯科診療所の値も加わるため、入院患者と比べて数倍の値となる。また、病院よりも一般診療所の方が数は多い。役割分担がそれなりに行われている証拠でもある。

年齢階層別動向を見ると、14歳までの年少児における通院患者数が意外に多い。大人として相応の体力を持つまでには医学の力によるサポートが欠かせないことの証でもある。15-19歳を底値として、それ以降は再び数は増え、65-69歳と70-74歳で値が跳ねるのは、入院患者数動向と同じ。ただしピークは70-74歳で、入院患者数と比べるといくぶん若い。高齢となると通院そのものも難しくなる事例が増えてくる結果ではある。

減る入院患者数、数も比率も増える高齢層


続いて経年推移による入院・外来患者の動向を確認する。まずは入院患者数。なお今件では年齢不詳の値は除外しているため、合計値は前項目のそれとは一致しない。

↑ 入院患者数(年齢階層別、万人)
↑ 入院患者数(年齢階層別、万人)

↑ 入院患者数(年齢階層別、比率)
↑ 入院患者数(年齢階層別、比率)

入院患者数は漸減中。これは医療技術の進歩により、入院が必要な場合でもその期間の短縮化が進んでいるからに他ならない。「日帰り手術」などという、前世紀では想像もできなかったタイプの手術も珍しいものではなくなった。2020年で大きく減ったのは、新型コロナウイルス流行の影響もあるのだろうか。

他方、紫色の部分の動向を見れば分かる通り、高齢者に限れば入院患者数はむしろ増減し(2020年では減ったが)、結果として全患者数に対する比率も増加中。高齢者人口そのものの増加だけでなく、高齢者の中でもより年を取った人の数・割合が増えるのとともに、病院における入院に頼る傾向が強くなった(医療施設と介護施設の区分が難しくなった)状況も多分に反映されている。直近2020年では、入院患者の7割強が65歳以上で占められている。一番古いデータとなる30年前の1984年と比べると、数・比率ともにおおよそ倍増している次第。

続いて外来患者。

↑ 外来患者数(年齢階層別、万人)
↑ 外来患者数(年齢階層別、万人)

↑ 外来患者数(年齢階層別、比率)
↑ 外来患者数(年齢階層別、比率)

外来患者は漸増のあと、今世紀に入ってからはほぼ横ばい。医療技術の進歩は従来入院が必要だった治療が通院で済むようになった部分も多々あるため、総患者数は明らかな減少傾向を見せるまでには至らない。また年齢階層別の動向も、割合そのものは大きく異なるが、若年・中年層が減少する一方で、高齢者が増える状況は入院患者数の動向と変わりがない。高齢者の通院者数・率は30年でほぼ倍増。直近の2020年では通院患者のほぼ半数が65歳以上で占められている。



余談となるが、65歳以上、75歳以上にそれぞれ区分した上で、医療機関種類別の入院・通院患者数をカウントした結果が次のグラフ。

↑ 施設種類別推計患者数(65歳以上限定、年齢階層別、万人)(2020年10月)
↑ 施設種類別推計患者数(65歳以上限定、年齢階層別、万人)(2020年10月)

65歳以上に限定すれば90.5万人が、75歳以上でも66.4万人が入院中。そして361.9万人・207.7万人が通院中。今後この数はさらに増えることが予想される。医療機関のオーバーワーク懸念や、他世代への医療リソースの分配なども考慮しながら、より適切な対応が求められよう。


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