2020-0122健康的な日常生活を維持するために欠かせない生活様式の一つが食事。その食事を確保するためには対価となるお金が必要不可欠。当然収入が潤沢なほど選択肢は増え、より贅沢な食生活を楽しめることになる。それでは世帯年収によって食事の内容にはどこまで違いが生じるのだろうか。どのような食品が多く食べられるようになるのだろうか。今回は厚生労働省が2020年1月14日に発表した「平成30年国民健康・栄養調査」の結果を基に、世帯年収別の食品群別の摂取量の違いを確認し、相関関係ではあるが、その実情をかいま見ることにする(【国民健康・栄養調査】)。



今調査に関する調査要項は先行記事【一日の平均歩数は男性6794歩・女性5942歩(最新)】を参照のこと。

次に示すのは男女に区分した上で、世帯年収を200万円未満・200万円以上400万円未満・400万円以上600万円未満・600万円以上にさらに区分し、主要な食品群別や栄養素別に1日あたりの摂取量(重量)を尋ねた上で、200万円未満の人の値を基準値(1.00)とした場合に、他の世帯年収に該当する人の相対的分量を示したもの。単純な相対量に加え、基準値と比べてどれだけ多いのかに関する増減度合いを%表記したグラフも併記した。

なお今件の世帯年収別区分では年齢階層と世帯員数による多変量解析を行い、各種調整をしてある。つまりそれぞれの世帯年収で、年齢階層や世帯構成人数は同率ずつ存在している状況になっている。世帯年収200万円未満の区分内では高齢者の比率が大きいため摂取量が少なくなるといったアンバランスな状態の統計値ではない。

まずは男性。

↑ 食品群別・栄養素別摂取量(20歳以上、男性、世帯年収200万円未満を1.00とした時の値、世帯年収別)(2018年)
↑ 食品群別・栄養素別摂取量(20歳以上、男性、世帯年収200万円未満を1.00とした時の値、世帯年収別)(2018年)

↑ 食品群別・栄養素別摂取量(20歳以上、男性、世帯年収200万円未満を基準とした時の増減率、世帯年収別)(2018年)
↑ 食品群別・栄養素別摂取量(20歳以上、男性、世帯年収200万円未満を基準とした時の増減率、世帯年収別)(2018年)

おおよそ世帯年収が高い方が摂取量は多く、潤沢な食生活を過ごしていることが分かる。特に種実類(ナッツなど)やきのこ類、乳類で量が増えている。他方、穀物やいも類など一部の食品では摂取量が減っており、高世帯年収層では主食の量が減り、その分惣菜などの量が増えていることもうかがえる。要は低世帯年収ではご飯などの主食に重点が置かれているが、世帯年収が高い世帯ではおかずにまで余裕が出てくる次第である。

興味深いのは砂糖・甘味料類の分野。200万円-400万円未満と600万円以上の世帯では減っている。今件の値はあくまでも重量であることから、高級品に手を伸ばしているのかもしれない。

女性も男性と基本的には変わらない。種実類で極端な差が出ていない分、見やすい形となっている。

↑ 食品群別・栄養素別摂取量(20歳以上、女性、世帯年収200万円未満を1.00とした時の値、世帯年収別)(2018年)
↑ 食品群別・栄養素別摂取量(20歳以上、女性、世帯年収200万円未満を1.00とした時の値、世帯年収別)(2018年)

↑ 食品群別・栄養素別摂取量(20歳以上、女性、世帯年収200万円未満を基準とした時の増減率、世帯年収別)(2018年)
↑ 食品群別・栄養素別摂取量(20歳以上、女性、世帯年収200万円未満を基準とした時の増減率、世帯年収別)(2018年)

男性では種実類がずば抜けて多かったが、女性ではそのような大きな差異は見られない。種実類ではむしろ基準値よりも低い層があるほど。また基準値との差異が上下0.3以内に収まっているのも印象的。

世帯年収が上になると大きめの値が出る食品で目立つのは砂糖・甘味料類、豆類、果実類、乳類。砂糖・甘味料類はお菓子など、豆類、果実類、乳類は健康的なイメージの強い食品。女性らしさがうかがえる動きではある。逆に穀類が減るのも興味深い。



先行する別途記事でも言及しているが、今件は相関関係の結果を記したものであり、因果関係まで証明できる値ではない。現状における傾向を示したまでの話。とはいえ世帯年収が上の人ほど主食摂取量が減り、副菜やし好品を多く採る傾向は確認できる。かねてから「収入が厳しいと、どうしても主食系のもので満腹感を充足させがちになる」との話を見聞きするが、それがある程度正しいことが裏付けられたとも評価できる。

この傾向が各属性の健康状態や行動性向といかなる関係があるのかはまた別の話だが、検証の際には大いに役立つ値には違いない。


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