
今調査の調査要項は先行記事【がんが怖い人7割強、理由は「死に至る場合があるから」(最新)】を参考のこと。
他の病気同様にがんもまた、治療の開始時期が治療動向・リスクの高低に大きな影響を与える。そして早期治療のためには早期発見が欠かせないが、それには定期的な検診が必要不可欠になる。ところが日本のがん検診受診率は低く、今調査の限りでも部位を問わずに2年以内に受診した経験がある人は5割台程度にとどまっている。

↑ がん検診受診状況(属性別)(2019年7月)
この「検診を避ける」状況を作り出す一因が、がん検診やがん治療に対する社会的認識。がん検診、さらにはがん治療では、冒頭で触れたように時間を割いた(=休みを取った上での)通院、場合によっては入院が必要になる。検診の場合は年に1度の期間、数回分(部位ごとに検診を行い、一度にまとめて受けられないこともあるため)で済むが、治療の場合は中長期にわたり月数回単位で定期的な通院が求められる。
そこで「2週間に1度程度(明記は無いが事実上1日丸ごとを使い)通院しなければならない」場合を仮定し、その場合、現代の日本社会は仕事を継続できる環境にあるかと尋ねたところ、「そのような状況でも仕事を続けられる」と考えている人は37.1%に留まっていた。対して「仕事の継続は難しそう」との意見は57.5%に及ぶ。

↑ 仕事と治療などの両立についての認識(がん治療・検査のため2週間に1度程度病院へ通う必要がある場合、現代の日本社会は働き続けられる環境だと思うか)(2019年7月)
がん検診・がん治療に限った話ではないが、「体のメンテナンス、チェック」に相当する医療機関への時間投入には、厳しい目が向けられているとの認識が高い。
男女別では女性、年齢階層別では60代以上の高齢層の方が、より一層「がん検診や治療通院で2週に1度定期的な休みが必要な場合、働き続けられない」とする意見が強い。女性の場合は職場での立場の弱さ、高齢層では重責にあるために治療の時間を取りにくいとの判断があるのだろう(要は回答者自身における「もしも」を社会全体の認識と重ねてしまっている)。
しかし一方で、50代まででも「通院・治療に至っても仕事を継続できる」とする意見は4割前後でしかない。企業、そして社会全体の理解度の低さが「がん検診そのもの、そして検診で仮にがんが見つかり通院治療を始めたら、仕事を辞めざるを得ない。あるいは時間を割けるよう配慮してもらうのは難しいので、通院治療そのものが不可能」との発想に至り、それががん検診率を下げる一因となっていると考えられる。
実際、「そう思わない」派(「どちらかといえばそう思わない」+「そう思わない」)に具体的理由を聞いたところ、時間を割けるような職場環境に無いと回答した人が多い。女性では体力的に困難との意見がトップだが、男性では仕事を代わりにしてくれる人が見つからないとの意見が最大値を示している。

↑ がん治療・検査のため2週間に1度程度病院へ通う必要がある場合、現代の日本社会は働き続けられないと回答した、その最大の理由(男女別)(2019年7月)
職場環境自身にリソース的・精神的余裕が無いのも原因ではあるが、何か必要な事態が発生した際に、該当者が席を外し他の人が一時的にバトンを引き受ける雰囲気、慣習そのものが薄いのが問題といえる。この点は育児休暇(特に男性)でも見られる事象で、大いに問題視すべき点である。
今調査はおおよそ2年おきの定点調査だが、この数年の限りでは環境に大きな変化は無かった。直近年の結果では、「そう思う」派(「そう思う」+「どちらかといえばそう思う」)が増えているのは喜ばしい限り。しかしながら増えているとはいえ、まだ3-4割程度でしかない。

↑ 仕事と治療などの両立についての認識(がん治療・検査のため2週間に1度程度病院へ通う必要がある場合、現代の日本社会は働き続けられる環境だと思うか)
制度の整備とともに、がん、そしてそれ以外も含め、疾病そのものとその予防・検診・治療に対する認識や理解を一人一人が、そして社会全体が高めてほしいものだ。
■関連記事:
【がんによる死亡率が増えているけど、がんが凶悪化したわけじゃないよ?】
【「職場にもっと理解があれば」男性の育児休業取得のハードルとは】
【主要死因別に見た死亡率(1899年以降版)(最新)】
【もし仮に「がん」になったら受ける治療、女性は医師より自分を信じる】
【男性が育児休業を取りたい理由、とれなかった理由】
他の病気同様にがんもまた、治療の開始時期が治療動向・リスクの高低に大きな影響を与える。そして早期治療のためには早期発見が欠かせないが、それには定期的な検診が必要不可欠になる。ところが日本のがん検診受診率は低く、今調査の限りでも部位を問わずに2年以内に受診した経験がある人は5割台程度にとどまっている。

↑ がん検診受診状況(属性別)(2019年7月)
この「検診を避ける」状況を作り出す一因が、がん検診やがん治療に対する社会的認識。がん検診、さらにはがん治療では、冒頭で触れたように時間を割いた(=休みを取った上での)通院、場合によっては入院が必要になる。検診の場合は年に1度の期間、数回分(部位ごとに検診を行い、一度にまとめて受けられないこともあるため)で済むが、治療の場合は中長期にわたり月数回単位で定期的な通院が求められる。
そこで「2週間に1度程度(明記は無いが事実上1日丸ごとを使い)通院しなければならない」場合を仮定し、その場合、現代の日本社会は仕事を継続できる環境にあるかと尋ねたところ、「そのような状況でも仕事を続けられる」と考えている人は37.1%に留まっていた。対して「仕事の継続は難しそう」との意見は57.5%に及ぶ。

↑ 仕事と治療などの両立についての認識(がん治療・検査のため2週間に1度程度病院へ通う必要がある場合、現代の日本社会は働き続けられる環境だと思うか)(2019年7月)
がん検診・がん治療に限った話ではないが、「体のメンテナンス、チェック」に相当する医療機関への時間投入には、厳しい目が向けられているとの認識が高い。
男女別では女性、年齢階層別では60代以上の高齢層の方が、より一層「がん検診や治療通院で2週に1度定期的な休みが必要な場合、働き続けられない」とする意見が強い。女性の場合は職場での立場の弱さ、高齢層では重責にあるために治療の時間を取りにくいとの判断があるのだろう(要は回答者自身における「もしも」を社会全体の認識と重ねてしまっている)。
しかし一方で、50代まででも「通院・治療に至っても仕事を継続できる」とする意見は4割前後でしかない。企業、そして社会全体の理解度の低さが「がん検診そのもの、そして検診で仮にがんが見つかり通院治療を始めたら、仕事を辞めざるを得ない。あるいは時間を割けるよう配慮してもらうのは難しいので、通院治療そのものが不可能」との発想に至り、それががん検診率を下げる一因となっていると考えられる。
実際、「そう思わない」派(「どちらかといえばそう思わない」+「そう思わない」)に具体的理由を聞いたところ、時間を割けるような職場環境に無いと回答した人が多い。女性では体力的に困難との意見がトップだが、男性では仕事を代わりにしてくれる人が見つからないとの意見が最大値を示している。

↑ がん治療・検査のため2週間に1度程度病院へ通う必要がある場合、現代の日本社会は働き続けられないと回答した、その最大の理由(男女別)(2019年7月)
職場環境自身にリソース的・精神的余裕が無いのも原因ではあるが、何か必要な事態が発生した際に、該当者が席を外し他の人が一時的にバトンを引き受ける雰囲気、慣習そのものが薄いのが問題といえる。この点は育児休暇(特に男性)でも見られる事象で、大いに問題視すべき点である。
今調査はおおよそ2年おきの定点調査だが、この数年の限りでは環境に大きな変化は無かった。直近年の結果では、「そう思う」派(「そう思う」+「どちらかといえばそう思う」)が増えているのは喜ばしい限り。しかしながら増えているとはいえ、まだ3-4割程度でしかない。

↑ 仕事と治療などの両立についての認識(がん治療・検査のため2週間に1度程度病院へ通う必要がある場合、現代の日本社会は働き続けられる環境だと思うか)
制度の整備とともに、がん、そしてそれ以外も含め、疾病そのものとその予防・検診・治療に対する認識や理解を一人一人が、そして社会全体が高めてほしいものだ。
■関連記事:
【がんによる死亡率が増えているけど、がんが凶悪化したわけじゃないよ?】
【「職場にもっと理解があれば」男性の育児休業取得のハードルとは】
【主要死因別に見た死亡率(1899年以降版)(最新)】
【もし仮に「がん」になったら受ける治療、女性は医師より自分を信じる】
【男性が育児休業を取りたい理由、とれなかった理由】
スポンサードリンク