2021-0110日本が抱える社会問題の多くにおいて要因となっている、人口構成比で高齢者比率が高い問題(高齢社会化問題)。医療技術の進歩や公衆衛生の健全化、治安の安定などにより平均寿命が延び、高齢者が増えた結果によるものだが、他の国ではどのような状況なのだろうか。平均寿命上位国における人口構成比の実情を確認していくことにする。


まず平均寿命上位国の確認。これは【平均非健康年数の国際比較】などにもある通り、WHO(世界保健機構)が公開しているデータベース【The Global Health Observatory】から、必要な値を抽出して精査する。現時点では2019年分の値が最新値となっている。

それによると平均寿命が一番長いのは日本で84.26年。次いでスイスの83.45年、韓国の83.30年と続く。上位20か国はすべて81年を超えている。

↑ 国別平均寿命(上位国、WHO公開値より、年)(2019年)
↑ 国別平均寿命(上位国、WHO公開値より、年)(2019年)

続いてこれらの国の年齢階層別人口構成比を確認する。これは【世界各国の子供・成人・高齢者比率】にもある通り、国連のデータベース【World Population Prospects】の公開値から同一の2019年分の値を用いる。なお人口の区分は基データに従い「14歳以下人口(子供)」「15-64歳人口(成人)」「65歳以上人口(高齢者)」としてある。また国の並びは国別平均寿命のままとしている。

↑ 2019年時点の国別平均寿命上位国における年齢・3区分別人口割合(WHO・国連公開値より)(2019年)
↑ 2019年時点の国別平均寿命上位国における年齢・3区分別人口割合(WHO・国連公開値より)(2019年)

65歳以上の人口比率が高いほど、社会全体における高齢者によって生じる負担が大きくなるわけだが、日本が群を抜いて高いことが改めて確認できる。平均寿命が高いのだからある意味当然だが、平均寿命が同レベルで高い他の国と比べても突出している。65歳以上人口比率が2割を超えているのは、日本以外ではイタリアとフランス、スウェーデン、マルタ、ドイツ。

他方、今後の人口構成比の動向を鑑みる上では注目すべき14歳以下人口比率だが、こちらはシンガポールが一番少なく12.3%、次いで日本が12.6%となっている。平均寿命が高い国の中でも日本はずば抜けて高齢者による社会全体の負担が大きく、同時に今後の社会を支える担い手となる成人へと成長していく子供の比率が低く、現在も今後も社会の負担に関する展望が厳しいことを示唆している。

子供の比率で目に留まるのはイスラエル。同国は高齢者人口比率も低く、平均寿命上位国の中では人口構成比上のバランスで、比較的健全な状態を示している。これはひとえに同国における戦時国家という特殊性によるところが大きい。無論、平均寿命はゼロ歳児の平均余命であることから、同国が国としてまだ若く、かつ公衆衛生や医療保険の制度が整っているとの理由もある。ちなみにイスラエルの平均寿命は2019年時点で82.62年のため、多産多死という状況ではない。

子供の比率の大小に関しては、合計特殊出生率(一人の女性が一生のうちに出産する子供の平均数。人口維持のための合計特殊出生率は2.00前後で、日本の場合は2.07から2.08)の動向を見ても納得の行く結果が出ている。

↑ 国別平均寿命上位国における合計特殊出生率(WHO・国連公開値より)(2015-2020年)
↑ 国別平均寿命上位国における合計特殊出生率(WHO・国連公開値より)(2015-2020年)

イスラエルにおいてはまさに富国強兵、産めよ増やせよが体現化されており、それが数字となって表れている。その上で公衆衛生や医療保険が整備されている結果として、平均寿命が世界で上位にあるのは、ある意味驚異的ではある。

他方日本の合計特殊出生率は1.37。平均寿命上位20か国の平均値を算出すると1.63となるので、低い方に該当する。ちなみにアメリカ合衆国は1.78、中国は1.69、世界全体では2.47。

寿命は長い方がよいのは当然の話。公衆衛生や医療保険の制度が整い、国が安定している証でもある。他方、人口構成比が社会構造のゆがみを生じる、社会全体に問題を引き起こす、健全な方向への歩みの足を引っ張るような状態は、果たして最適解といえるのか否か。今回の各種値は社会保障の不公平感なども併せ、日本の特異な現状を改めて認識させられる実情には違いない。


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