2022-1107本人が喫煙をしていなくとも、周りの人のたばこの煙(副流煙)にさらされることを受動喫煙(間接喫煙)と呼んでいる。当然これも健康に悪い影響を与えるため、非喫煙者にとっては好ましいものではない。この受動喫煙について、人々は政府にどのような政策を求めているのだろうか。内閣府大臣官房政府広報室が2022年11月4日に発表したたばこ対策に関する世論調査から、その実情を確認する(【発表リリース:たばこ対策に関する世論調査】)。
今調査の調査要項は先行記事【周りの人のたばこの煙を不快に思う人は83.2%(最新)】を参考のこと。

今調査において、包括的なたばこ対策として「受動喫煙対策の強化」を求めている人は48.3%に達している。その人達に具体的な対策の要望を複数回答で尋ねた結果が次のグラフ。報告書では「受動喫煙対策の強化」と答えた人における割合が示されているが、今グラフでは調査対象母集団全体比を算出して作成している。例えば「事務所の禁煙推進」は18.0%とあるので、「受動喫煙対策の強化」と答えた人のうちの18.0%ではなく、全体の18.0%が事務所の禁煙推進を政府として取り組んでほしいと考えている。

↑ 受動喫煙対策に関する政府への要望(複数回答、全体比、上位意見)(2022年8月)
↑ 受動喫煙対策に関する政府への要望(複数回答、全体比、上位意見)(2022年8月)

最上位の回答は「病院・学校・行政機関などの敷地内の禁煙」で29.5%。全体の約3割が望んでいる。次いで「路上・公園など屋外の喫煙場所削減」が28.7%、「飲食店(小規模店舗を含む)の禁煙」が24.5%、「タクシーや鉄道などの禁煙」が22.4%、「ホテル・旅館などの客室禁煙」が21.8%と続く。具体的に政府がこれらの事案にどのような対策を講じるかは言及されていないが、法令による規制や補助金制度の制定、公的機関ならば該当設備の新設・改善などが考えられる。

ある意味当然ではあるが、公的要素が低い場所への値は低いものとなっている。政府がそこまで手を差し伸べる必要は無いとの認識だろう。

これを回答者の男女別に見たのが次のグラフ。おおよその項目で女性の方が高い値を示している。

↑ 受動喫煙対策に関する政府への要望(複数回答、全体比、上位意見、男女別)(2022年8月)
↑ 受動喫煙対策に関する政府への要望(複数回答、全体比、上位意見、男女別)(2022年8月)

唯一男性の方が高い値を示しているのは「建物内喫煙室や建物外喫煙所の増加」だが、これは男性の方が利用率が高いと考えれば納得はできる。一方で「事務所の禁煙」「パチンコ・麻雀・カラオケなど遊興・娯楽施設の禁煙」でも女性の方が高い値なのはやや意外な感はある。

最後は年齢階層別。

↑ 受動喫煙対策に関する政府への要望(複数回答、全体比、上位意見、年齢階層別)(2022年8月)
↑ 受動喫煙対策に関する政府への要望(複数回答、全体比、上位意見、年齢階層別)(2022年8月)

「建物内喫煙室や建物外喫煙所の増加」では18-29歳の値が飛び抜けており、26.4%との値が出ているのが目にとまる。それに限らず複数の項目で18-29歳が高い値を示しており、若年層が強い要望を持っていることが分かる。

一方で「事務所の禁煙」「パチンコ・麻雀・カラオケなど遊興・娯楽施設の禁煙」などでおおよそ若年層が低めて年齢とともに値が積み増しされていくのは、その施設での利用度合いが影響しているのだろう。70歳以上で「事務所の禁煙」の値が落ちる一方、「パチンコ・麻雀・カラオケなど遊興・娯楽施設の禁煙」は大きく増えるのは印象的ではある。

実際にはそれぞれの施設の公共性、利用者数、影響度合いなどを勘案する必要があるため、単純に要望しているとの値そのままを判断材料にはできない。しかしどの属性が個々の場所での受動喫煙対策を望んでいるのかを知るのには、今調査結果はよい参考資料となるに違いない。


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