新型コロナウイルスによる感染症に関して特に世間を騒がす話の一つに、物品の買い占め問題がある。マスクは需要が急増した一方で供給の大部分を輸入に頼っていたが輸入元からの供給が事実上ストップし、国産マスクの増産は始まっているが急増する需要には追い付かず、さらに買い占めの動きが生じて需給バランスが崩れてしまった。他方、米やティッシュペーパーなどは十分な供給があるにもかかわらず流言の類で流通が追い付かず、一時的に需要過多による品不足が発生する事態が生じている。今回は【家計調査】の結果を基に、その騒動の一端を世帯種類別の動向として、統計上の数字から確認していくことにする。
今回検証する品目は、原則として品目分類におけるものとする。具体的には次の通り。
消毒液やマスクは単体としての品目が無かったため、他の品も含まれる品目を用いることから、正確さの上ではやや欠ける形となる。
また、月単位の調査が実施されているのは二人以上世帯のみのため、検証は基本的に二人以上世帯に限ったものとなる。単身世帯や、単身世帯と二人以上世帯を合わせた全世帯を意味する総世帯に関する検証は、四半期単位の調査結果を待った上で別途行う予定。
最初に検証するのは、世帯主の年齢階層別に見た、品目ごとの支出金額と世帯購入頻度。世帯購入頻度とは世帯単位での購入頻度を意味する。100世帯あたりの値なので、例えば50という値なら、該当期間において100世帯あたり延べ50世帯が購入したことになる。世帯が購入したか否かではなく延べ回数であることに注意。仮に1世帯のみが50回購入しても、100世帯あたりの世帯購入頻度は50となる。
↑ 二人以上世帯の品目別支出金額(年齢階層別、円)(2020年3月)
↑ 二人以上世帯の品目別世帯購入頻度(年齢階層別、100世帯あたり)(2020年3月)
3月の時点では支出金額・世帯購入頻度ともに、米やペーパータオルなど、マスクなどは元々子供の分だけ世帯構成人数が多いであろう中年層が高い形となっている。他方、ティッシュペーパーやトイレットペーパーのようなペーパー類は50-60代、そして石けんや消毒液などは60代から70歳以上が高め。
このうち石けんや消毒液などは薬局で購入できる市販薬も含まれることから、高めの値が出るのもおかしくはない。他方、ティッシュペーパーやトイレットペーパーのようなペーパー類、特にティッシュペーパーは2月では30-40代の方が高い値を示しており、3月では支出金額の傾向に変化が生じている、50-60代が支出金額を増やしたことがうかがえる。
↑ 二人以上世帯の品目別支出金額(年齢階層別、円)(2020年2月)(再録)
↑ 二人以上世帯の品目別世帯購入頻度(年齢階層別、100世帯あたり)(2020年2月)(再録)
続いて世帯構造別として、勤労者世帯か無職世帯かによる違いを確認する。
↑ 二人以上世帯の品目別支出金額(勤労者世帯か無職世帯か、円)(2020年3月)
↑ 二人以上世帯の品目別世帯購入頻度(勤労者世帯か無職世帯か、100世帯あたり)(2020年3月)
二人以上世帯である以上、無職世帯はおおよそ年金生活をしている高齢者世帯が該当する。世帯構成人数は勤労者世帯の方が多く、世帯単位での消費活動も活発であろうことから、結果として日常必需品となる米やティッシュペーパー、ペーパータオルは勤労者世帯の方が高い値となっている。他方、石けんや消毒液などは上記で触れた通り薬局で購入できる市販薬も含まれることから、無職世帯の方が高い値を示す形となっている。米の値がほとんど変わりないのは、高齢者ほど主食で米を好む傾向があるからだろう。
一方でティッシュペーパーやトイレットペーパーは支出金額・世帯購入頻度ともに、両種類世帯でほとんど変わらない値を示している。従来この値は世帯構成を考えれば勤労者世帯の方が大きく差をつけて高い値を示すはずで、実際2020年2月ではそのような結果が出ている。
↑ 二人以上世帯の品目別支出金額(勤労者世帯か無職世帯か、円)(2020年2月)(再録)
↑ 二人以上世帯の品目別世帯購入頻度(勤労者世帯か無職世帯か、100世帯あたり)(2020年2月)(再録)
勤労者世帯が支出金額・世帯購入頻度を減らしたのか、無職世帯が増やしたのかまではあきらかではないが、3月においては無職世帯がティッシュペーパーやトイレットペーパーを積極的に買い求めたであろうことは容易に推測できる。さらに上記の年齢階層別の動向と合わせ考えると、この無職世帯は多分に世帯主が50-60代の世帯が該当するであろうことも推測できよう。
最後に余談ではあるが、都道府県別の支出金額の実情。すべてを見るには冗長に過ぎるので、品目は石けんや消毒液などとマスクなどに限定する。
↑ 二人以上世帯の品目別支出金額(石けんや消毒液など、都道府県別、円)(2020年3月)
↑ 二人以上世帯の品目別支出金額(マスクなど、都道府県別、円)(2020年3月)
石けんや消毒液に関しては傾向だった動きは無し。最大値は三重県の2517円で、奈良県の2404円が続く。最小値は沖縄県の976円。マスクなどでも傾向だった動きは無し。新潟県の1406円がトップで、広島県の1325円が続いている。最小値は大分の670円。
消毒液などは医療機関向けが優先されているので一般世帯への供給が潤沢となるのはもう少し先の話になるが、マスクはすでに需給関係が逆転し、一部では(品質・安全性を別にすれば)値崩れが生じているとの話もある。購入ができなければ支出金額には反映されないことから、4月になれば支出金額そのものがマスクの供給状況と浅からぬ関係を示すようになるかもしれない。
■関連記事:
【騒動後初めて商品棚に並ぶ普通のマスクを見た】
【マスク配布の件】
【他人が気になるマスクの交換頻度、その実情を探る】
【マスクへのあるある話な不満点、眼鏡に耳に、そして内部が】
検証する品目
今回検証する品目は、原則として品目分類におけるものとする。具体的には次の通り。
・米…米としての原形をとどめたもので、強化米入りも含む。米に加工を加えたものは除く。
・ティッシュペーパー…ロール状以外の薄葉紙のもの。
・トイレットペーパー…ロール状で水溶性のある薄葉紙のもの。
・ペーパータオルなど…正式な品目名は「他の家事用消耗品のその他」。家事用消耗品のうちティッシュペーパーや芳香剤以外のもの。ペーパータオル以外に除湿剤、ようじ、潤滑油、ウェットティッシュ、漂白剤など。
・石けんや消毒液…正式な品目名は「他の医薬品」。胃腸薬や栄養剤などに該当しない医薬品。石けんや消毒液以外に睡眠薬や下剤、避妊薬や鼻炎用の飲み薬、せき止めなど。
・マスク…正式な品目名は「保健用消耗品」。マスク以外に綿棒、ばんそうこう、おむつカバー、入浴剤など。
・ティッシュペーパー…ロール状以外の薄葉紙のもの。
・トイレットペーパー…ロール状で水溶性のある薄葉紙のもの。
・ペーパータオルなど…正式な品目名は「他の家事用消耗品のその他」。家事用消耗品のうちティッシュペーパーや芳香剤以外のもの。ペーパータオル以外に除湿剤、ようじ、潤滑油、ウェットティッシュ、漂白剤など。
・石けんや消毒液…正式な品目名は「他の医薬品」。胃腸薬や栄養剤などに該当しない医薬品。石けんや消毒液以外に睡眠薬や下剤、避妊薬や鼻炎用の飲み薬、せき止めなど。
・マスク…正式な品目名は「保健用消耗品」。マスク以外に綿棒、ばんそうこう、おむつカバー、入浴剤など。
消毒液やマスクは単体としての品目が無かったため、他の品も含まれる品目を用いることから、正確さの上ではやや欠ける形となる。
また、月単位の調査が実施されているのは二人以上世帯のみのため、検証は基本的に二人以上世帯に限ったものとなる。単身世帯や、単身世帯と二人以上世帯を合わせた全世帯を意味する総世帯に関する検証は、四半期単位の調査結果を待った上で別途行う予定。
年齢階層別や世帯構造別の購入性向
最初に検証するのは、世帯主の年齢階層別に見た、品目ごとの支出金額と世帯購入頻度。世帯購入頻度とは世帯単位での購入頻度を意味する。100世帯あたりの値なので、例えば50という値なら、該当期間において100世帯あたり延べ50世帯が購入したことになる。世帯が購入したか否かではなく延べ回数であることに注意。仮に1世帯のみが50回購入しても、100世帯あたりの世帯購入頻度は50となる。
↑ 二人以上世帯の品目別支出金額(年齢階層別、円)(2020年3月)
↑ 二人以上世帯の品目別世帯購入頻度(年齢階層別、100世帯あたり)(2020年3月)
3月の時点では支出金額・世帯購入頻度ともに、米やペーパータオルなど、マスクなどは元々子供の分だけ世帯構成人数が多いであろう中年層が高い形となっている。他方、ティッシュペーパーやトイレットペーパーのようなペーパー類は50-60代、そして石けんや消毒液などは60代から70歳以上が高め。
このうち石けんや消毒液などは薬局で購入できる市販薬も含まれることから、高めの値が出るのもおかしくはない。他方、ティッシュペーパーやトイレットペーパーのようなペーパー類、特にティッシュペーパーは2月では30-40代の方が高い値を示しており、3月では支出金額の傾向に変化が生じている、50-60代が支出金額を増やしたことがうかがえる。
↑ 二人以上世帯の品目別支出金額(年齢階層別、円)(2020年2月)(再録)
↑ 二人以上世帯の品目別世帯購入頻度(年齢階層別、100世帯あたり)(2020年2月)(再録)
続いて世帯構造別として、勤労者世帯か無職世帯かによる違いを確認する。
↑ 二人以上世帯の品目別支出金額(勤労者世帯か無職世帯か、円)(2020年3月)
↑ 二人以上世帯の品目別世帯購入頻度(勤労者世帯か無職世帯か、100世帯あたり)(2020年3月)
二人以上世帯である以上、無職世帯はおおよそ年金生活をしている高齢者世帯が該当する。世帯構成人数は勤労者世帯の方が多く、世帯単位での消費活動も活発であろうことから、結果として日常必需品となる米やティッシュペーパー、ペーパータオルは勤労者世帯の方が高い値となっている。他方、石けんや消毒液などは上記で触れた通り薬局で購入できる市販薬も含まれることから、無職世帯の方が高い値を示す形となっている。米の値がほとんど変わりないのは、高齢者ほど主食で米を好む傾向があるからだろう。
一方でティッシュペーパーやトイレットペーパーは支出金額・世帯購入頻度ともに、両種類世帯でほとんど変わらない値を示している。従来この値は世帯構成を考えれば勤労者世帯の方が大きく差をつけて高い値を示すはずで、実際2020年2月ではそのような結果が出ている。
↑ 二人以上世帯の品目別支出金額(勤労者世帯か無職世帯か、円)(2020年2月)(再録)
↑ 二人以上世帯の品目別世帯購入頻度(勤労者世帯か無職世帯か、100世帯あたり)(2020年2月)(再録)
勤労者世帯が支出金額・世帯購入頻度を減らしたのか、無職世帯が増やしたのかまではあきらかではないが、3月においては無職世帯がティッシュペーパーやトイレットペーパーを積極的に買い求めたであろうことは容易に推測できる。さらに上記の年齢階層別の動向と合わせ考えると、この無職世帯は多分に世帯主が50-60代の世帯が該当するであろうことも推測できよう。
マスクなどの都道府県別動向
最後に余談ではあるが、都道府県別の支出金額の実情。すべてを見るには冗長に過ぎるので、品目は石けんや消毒液などとマスクなどに限定する。
↑ 二人以上世帯の品目別支出金額(石けんや消毒液など、都道府県別、円)(2020年3月)
↑ 二人以上世帯の品目別支出金額(マスクなど、都道府県別、円)(2020年3月)
石けんや消毒液に関しては傾向だった動きは無し。最大値は三重県の2517円で、奈良県の2404円が続く。最小値は沖縄県の976円。マスクなどでも傾向だった動きは無し。新潟県の1406円がトップで、広島県の1325円が続いている。最小値は大分の670円。
消毒液などは医療機関向けが優先されているので一般世帯への供給が潤沢となるのはもう少し先の話になるが、マスクはすでに需給関係が逆転し、一部では(品質・安全性を別にすれば)値崩れが生じているとの話もある。購入ができなければ支出金額には反映されないことから、4月になれば支出金額そのものがマスクの供給状況と浅からぬ関係を示すようになるかもしれない。
■関連記事:
【騒動後初めて商品棚に並ぶ普通のマスクを見た】
【マスク配布の件】
【他人が気になるマスクの交換頻度、その実情を探る】
【マスクへのあるある話な不満点、眼鏡に耳に、そして内部が】
スポンサードリンク