2020-0914冬の終わり頃から深刻化しはじめ、今では世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルス。ワクチンや治療薬が開発されるまでの間とはいえ、人々の生活様式も大きな変化を強いられている。家庭における消費傾向にはどのような影響が生じているのだろうか。家計調査の値を基に、二人以上世帯の実情について確認をしていくことにする(【家計調査】)。


被覆および履物が減り、家具・家事用品が増える…大区分での実情


次以降に示すのは二人以上世帯での2020年1-3月期と2020年4-6月期における、前年同期比の区分単位での支出金額の変化動向。分量の変化の観点での勘案も必要だとは思われるが、分量は非公開の品目が多数存在するため、今回は支出金額のみでの精査とする。そもそも大区分・中区分では分量そのものが存在しない。

まずは大区分における動向。

↑ 月あたりの支出金額(二人以上世帯、品目分類、大区分、前年同期比)
↑ 月あたりの支出金額(二人以上世帯、品目分類、大区分、前年同期比)

大きな変化を示しているのは、プラスでは家具・家事用品、マイナスでは被服および履物、教育、教養娯楽。家具・家事用品の支出金額が増えたのは巣ごもり化で自宅にいる機会が多くなったからだろう。また2020年4-6月期に限れば特別定額給付金の恩恵を受け、財布の紐が緩くなったのも一因かもしれない。

他方、マイナスでは巣ごもり化により支出機会が減りそうな品目が集まっている。被服及び履物は外出機会が減ったから、教育は学校が休校のため、教養娯楽は主に旅行機会が減ったことによるもの。2020年1-3月期より4-6月期の方が幅が大きくなっている品目が多いのは、本格的な規制が行われるようになったのは4月に入ってからだと思われる(2020年4月7日には7都道府県に緊急事態宣言が発出され、16日には対象地域が全都道府県に拡大)。

巣ごもりで増えたもの…中区分での実情


続いて中区分での動向を確認する。まずは2020年1-3月期。

↑ 月あたりの支出金額(二人以上世帯、品目分類、中区分、前年同期比)(2020年1-3月期)
↑ 月あたりの支出金額(二人以上世帯、品目分類、中区分、前年同期比)(2020年1-3月期)

食品の類がおおよそ増えているのは巣ごもり化によるもの。一方で外食が減っているのは印象的。家事用消耗品が大きく増えているのは、利用する機会が増えたからだろう。また被服類で和服が増え、洋服やシャツ・セーター類が大きく減っているのは興味深いところ。

医薬品や保健医療用品・器具が増えているのは新型コロナウイルス対策によるものだろう。他方、外出機会が減ったため交通は減っている。休校で授業料などは大きく減っているが、代わりに教科書・学習参考教材は大きく増えている。また同時に教養娯楽用耐久財(テレビやビデオ、パソコン、カメラ、楽器、学習机など)も増えており、自宅での学習機会が増えたことが推測される。

続いて2020年4-6月期。

↑ 月あたりの支出金額(二人以上世帯、品目分類、中区分、前年同期比)(2020年4-6月期)
↑ 月あたりの支出金額(二人以上世帯、品目分類、中区分、前年同期比)(2020年4-6月期)

食品の類が増えているのは1-3月期と変わらず。他方、外食の減り方は1-3月期より随分と大きなものとなっている。緊急事態宣言が影響しているのだろう。

1-3月期では増えた和服も含め、被服類はおおよそ大きな減少。デパートなどに新しい服を買いに行く機会そのものを減らした可能性が高い。実際、チェーンストア(スーパーマーケットやデパートなど)の業界団体の売上報告の限りでは、毎月のように衣料品部門は大きなマイナスを示している。

医薬品や保健医療用品・器具、教科書・学習参考教材や教養娯楽用耐久財が増え、交通が減っているのも1-3月期と変わりなし。ただし、幅が大きくなっており、行動の変化が大きくなったものと考えられる動きをしている。交際費もマイナス26.9%と大幅な減少を見せ、居酒屋などは大きなダメージを受けているであろうことは容易に想像できる。

意外なもの、当然なもの…小区分での実情


最後は小区分での動向。こちらは幅が50%を超えたものに限定する。なお品目の特性により元々の金額の小ささから比率が極端になったものや、ゼロがあるために計算が不可能になった品目は除外している。

まずは2020年1-3月期。

↑ 月あたりの支出金額(二人以上世帯、品目分類、小区分、前年同期比でプラス50%以上)(2020年1-3月期)
↑ 月あたりの支出金額(二人以上世帯、品目分類、小区分、前年同期比でプラス50%以上)(2020年1-3月期)

↑ 月あたりの支出金額(二人以上世帯、品目分類、小区分、前年同期比でマイナス50%以下)(2020年1-3月期)
↑ 月あたりの支出金額(二人以上世帯、品目分類、小区分、前年同期比でマイナス50%以下)(2020年1-3月期)

食器戸棚が大きく増え、子供用靴・サンダルも増加。生活の身近なものへの注視がうかがえる。

他方、国内パック旅行費や葬儀関係費、バス通学定期代などは大きく減っており、早くも新型コロナウイルスの影響を受けた品目が出ていることがうかがえる。

続いて2020年4-6月期。影響が大きくなったため、プラスもマイナスも品目が多数に上ったことから、グラフのスタイルも変更している。

↑ 月あたりの支出金額(二人以上世帯、品目分類、小区分、前年同期比でプラス50%以上)(2020年4-6月期)
↑ 月あたりの支出金額(二人以上世帯、品目分類、小区分、前年同期比でプラス50%以上)(2020年4-6月期)

↑ 月あたりの支出金額(二人以上世帯、品目分類、小区分、前年同期比でマイナス50%以下)(2020年4-6月期)
↑ 月あたりの支出金額(二人以上世帯、品目分類、小区分、前年同期比でマイナス50%以下)(2020年4-6月期)

小区分でも食器戸棚が登場し、大きな増加。自動車教習料が増えているのは興味深い。一方で保健用消耗品などは納得ができる。この頃からすでにマスクなどへの引き合いがあったのだろう。

他方、マイナスでは外国パック旅行費やスポーツ観覧料、パック旅行費など旅行関係が軒並み大きな減少。他にも外での娯楽が多数目に留まる。鉄道運賃がマイナス79.1%、バス通学定期代がマイナス71.6%など、休校・巣ごもり化で軒並み交通機関も使われなくなった実情が透けて見える。



今件はあくまでも平均的な二人以上世帯における支出金額の動向に過ぎず、さまざまな環境の違いにより実際の支出金額は世帯ごとに異なってくる。とはいえ、新型コロナウイルスの影響で多数の品目の需要が減った、あるいは増えた実情がうかがい知れる。各業界団体が発表している業界全体の売上動向が、うそ偽りのない切実な実情を示すものであることが改めて理解できる値に違いない。


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