
ほとんどの品目がマイナス…大区分での実情
次以降に示すのは単身世帯での2020年1-3月期と2020年4-6月期における、前年同期比の区分単位での支出金額の変化動向。分量の変化の観点での勘案も必要だとは思われるが、分量は非公開の品目が多数存在するため、今回は支出金額のみでの精査とする。そもそも大区分・中区分では分量そのものが存在しない。
まずは大区分における動向。

↑ 月あたりの支出金額(単身世帯、品目分類、大区分、前年同期比)
二人以上世帯では家具・家事用品など一部品目で大きなプラスが見られたが、単身世帯ではほとんどの品目が減少。単身世帯は二人以上世帯と比べ、新型コロナウイルスの影響で消費を大きく減らしたようだ。
特に被服及び履物や教養娯楽の減少度合いが大きい。巣ごもり化に積極的な姿勢を見せ、結果として支出金額が減ったからなのだろう。教養娯楽は旅行機会が減ったことによるところが大きいものと思われる。
他方、二人以上世帯でも見られたが、2020年4-6月期では光熱・水道で大きな増加が生じている。巣ごもり化が進み、自宅にいる時間が延びたため、電気代などが増加したのだろう。
気になるのは2020年4-6月期に生じるものと思われる特別定額給付金の効果による動きが見られないこと。大区分の区切りでは他の品目の減少に隠れてしまっているのかもしれないが、注意が必要な動きに違いない。ちなみに消費支出全体では2020年1-3月期と2020年4-6月期双方とも前年同期比でマイナスを示している(それぞれマイナス4.1%、マイナス12.4%)。
巣ごもりで増えたもの…中区分での実情
続いて中区分での動向を確認する。まずは2020年1-3月期。

↑ 月あたりの支出金額(単身世帯、品目分類、中区分、前年同期比)(2020年1-3月期)
食品の類がおおよそ増えているのは巣ごもり化によるものだが、その増加度合いはわずかなもの。多分の品目が減少を示しており、単身世帯における2020年1-3月期の消費傾向は随分としぼんでいたことがうかがえる。寝具類が大きく伸びたのは自宅にいる時間が増え、寝る機会が多くなったからかもしれない。教養娯楽用耐久財(テレビやビデオ、パソコン、カメラ、楽器、学習机など)が増えているのは、自宅での学習機会が増えたからだろう。
こづかい(使途不明)が大きく減っているのが目に留まる。子供や孫が来訪の際に高齢者が手渡すこづかいに関して、外出自粛などの動きによってその機会そのものが減ったのが要因かもしれない。
続いて2020年4-6月期。

↑ 月あたりの支出金額(単身世帯、品目分類、中区分、前年同期比)(2020年4-6月期)
食品の類の増加幅が1-3月期と比べて大きくなっており、巣ごもり化が進んでいることが想像できる。他方、外食はほぼ半減。一人暮らしでは外食を利用する機会も多いだけに、大きな変化には違いない。
寝具類や家事雑貨、家事用消耗品、家事サービスなど自宅の環境整備向けと思われる支出金額が増えているのも目に留まる。本格的な巣ごもり化の際に、色々と家の中の整備をしなければならなくなったのだろうか。生地・糸類が増えているのは、一部で話題に上った編み物に挑戦する人が出てきたからかもしれない。
医療関係はおおよそ増加。特に保健医療用品・器具はプラス37.1%と大幅に増加している。マスクや体温計が該当するため、これらが値を押し上げたのだろう。
意外なもの、当然なもの…小区分での実情
最後は小区分での動向。こちらは幅が50%以上のものに限定する。なお品目の特性により元々の金額の小ささから比率が極端になったものや、ゼロがあるために計算が不可能になった品目は除外している。
まずは2020年1-3月期。

↑ 月あたりの支出金額(単身世帯、品目分類、小区分、前年同期比でプラス50%以上)(2020年1-3月期)

↑ 月あたりの支出金額(単身世帯、品目分類、小区分、前年同期比でマイナス50%以下)(2020年1-3月期)
ベッドや身の回り用品関連サービスなどが大きく増加しているが、高齢者の用品だろうか。動物病院代や自動車教習料、歯科診療代などが増加しているのは、4月以降の新型コロナウイルスの流行による影響が大きなものとなる前に駆け込み的にし終えておこうとの思惑が働いたのかもしれない。また他の通信機器(電話機、無線装置、Wi-Fiルーターなど)やパソコンも増えており、自宅業務の環境整備の動きもあるように見える。
他方、食器戸棚やエアコン、電気冷蔵庫のような家具用品、旅行関係、自動車関係が大きく減っている。家具用品は二人以上世帯では増加しており、逆の動きを示しているのは興味深い。一人暮らしだから家具などにはあまり関心が生じないということなのだろうか。
続いて2020年4-6月期。影響が大きくなったため、プラスもマイナスも品目が多数に上ったことから、グラフのスタイルも変更している。つまり2020年1-3月期と比べても、大きな変化が生じたということだ。

↑ 月あたりの支出金額(単身世帯、品目分類、小区分、前年同期比でプラス50%以上)(2020年4-6月期)

↑ 月あたりの支出金額(単身世帯、品目分類、小区分、前年同期比でマイナス50%以下)(2020年4-6月期)
特別定額給付金による特需が生じているようで、比較的高額な品目が大きく増えている。祭具・墓石が大きな増加を示しているのは、高齢者によるところが大きいのだろう。他方、子供用下着類の増加は孫などへのプレゼントだろうか(単身世帯を対象にしているので、回答者の世帯には回答者自身以外はいない)。保健用消耗品はマスクなどが該当するため、ある程度の量を買い込んだものと考えられる。同時に前年同期ではマスクの必要性はほとんど無かったはずなので、その分大きな増加となった次第である。
他方、マイナスではスポーツ観覧料や外国パック旅行費、パック旅行費など旅行関係が軒並み大きな減少。他にも外での娯楽やその関連品が多数目に留まる。映画・演劇などの入場料はマイナス92.7%、航空運賃はマイナス90.1%、遊園地入場・乗り物代がマイナス88.8%、文化施設入場料がマイナス88.6%など、巣ごもり化による外出忌避の実情が透けて見える。
今件はあくまでも平均的な単身世帯における支出金額の動向に過ぎず、さまざまな環境の違いにより実際の支出金額は世帯ごとに異なってくる。とはいえ、新型コロナウイルスの影響で多数の品目の需要が減った、あるいは増えた実情がうかがい知れる。各業界団体が発表している業界全体の売上動向が、うそ偽りのない切実な実情を示すものであることが改めて理解できる値に違いない。
一部項目における、明らかに高齢者の主導によるものと思われる動きを見るに、単身高齢世帯に限定した支出金額の実情を確認したいところではあるが、品目分類の区分では年齢階層別は年単位でしか計測されていない。残念な話ではある。
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