研究開発イメージ先に【世界の医薬品メーカーの売上高ランキング】で2008年における世界各国の医薬品メーカーの売上ランキングを掲載したところ、「これだけ売上の規模が違うのだから、開発費もやっぱり日本の企業は少額なのだろうか」という質問をいただいた。研究開発費を多くすればそれだけ売上が伸びるとは限らないが、将来性を図る一つの指針にはなりうる。幸いにも元データの【世界の医薬品メーカーランキング2008】には、研究開発費の項目も確認できたので、早速こちらをグラフ化してみることにした。



今データは原則として医療用医薬品売上のランキング。米ドル比較のデータだが、2008年以降は為替の変動が激しいため、イギリスポンドや日本円は2008年の年平均レートで換算している。また、元データでは売上高30億ドル以上のものがリストアップされているが、今回は見やすさのこともあり30位までに限定した。

世界の医薬品メーカー研究開発費ランキング(2008年、上位30位)(単位・億ドル)(日本企業は赤で着色)
世界の医薬品メーカー研究開発費ランキング(2008年、上位30位)(単位・億ドル)(日本企業は赤で着色)

各企業毎の順位について、先の「売上高ランキング」と大きな差異は無い。よほど特異な企業で無い限り、売上高(≒利益)の大半を開発費にぶちこむような真似はしないし、逆に開発費をほとんど投入しない医薬品メーカーも考えられないからだ。とはいえ、各企業間で研究開発費への配分率にはある程度違いがあるようで、赤色で着色した日本企業は、売上高の順位と比べると多少ではあるものの、より上位に来ているのが分かる。

もちろん、開発費の投入額に比例して商品化される薬品が増えるわけでなければ、売上が伸びるわけでもない。多額の開発資金を投入してもライン化に失敗することもあるし、逆に予想以上の売上をあげる医薬品の開発に成功することもある。

合併契約イメージまた最近では新薬を開発するのと共に、将来性の高い同業他社を買収する動きも活発。日本企業でも上場企業が時々海外の医薬品メーカーを買収した旨のリリースを発することがあるが(最近だと武田薬品工業の【米国バイオ医薬品会社IDM Pharma, Inc.の公開買い付けが記憶に新しい】)、買収は開発リスクを最小限に抑えることができるため、今後も頻繁に行われることだろう。

「人が健康を求める以上、医薬品に対するニーズは尽きることが無い」とは先の記事のまとめの文章ではあるが、ニーズは尽きないものの新薬については以前と比べて開発が難しくなっている。元々新薬開発は1000件挑戦して1件モノに出来れば成功という類のものであるし、既知の領域が広がっている(次々に新薬が開発されるのだから当然)ことに加え、安全性を重視するがため認可がおりにくくなっているからだ。今後医薬品メーカーの中には、「開発は半ば以上他社にゲタを預ける」ような考えで、むしろ買収(M&A)に重点を置くところも出てくるかもしれない。

とはいえ、新薬の研究開発や既存薬の改善のための投資は欠かせない。進化発展の努力を止めてしまえば、そこから退化衰亡が始まるのは、医薬品メーカーに限らずどの企業でも同じである。かくして今年もまた、新しい医療の進歩を求めて研究開発が繰り広げられることになる。

上記グラフで赤く塗られた日本企業の研究開発費が実を結び、数年、十数年後の売上高ランキングで、少しでも左側(上位)にスライドするのに貢献することを祈らずにはいられない。もちろん世のため、患者のために役立つ医薬品が開発された上での話であることはいうまでもない。