インフルエンザ定点観測イメージ先に【なぜ真夏から!? 東京都のインフルエンザ報告数に特異な傾向】でお伝えしたように、少なくとも東京都では本来秋以降に増加するはずのインフルエンザの保健所への報告数が今年2009年では夏に増加を見せるという特異な傾向を見せている。これには季節性インフルエンザも含まれていること、さらに【新型インフルエンザ再び流行水準へ】でお伝えし、厚生労働省側も【フォトレポート・厚生労働省内会見室】で発表しているように、2009年8月19日の舛添厚生労働大臣の注意喚起などにより、その大部分が新型インフルエンザ(インフルエンザA・H1N1型)の罹患者であることが明らかになった。今記事はそれを機会にした【東京都の感染症情報センター】で公開されている、【定点報告疾病集計表・週報告分データ】の定点観測データの2009年8月26日更新版である。



まずは感染症名を「インフルエンザ」(新型インフルエンザ+季節性インフルエンザ)に設定し、「5年間比」をクリックした上で「更新」をした結果が次のグラフ。

東京都における「インフルエンザ」の週単位報告数推移(今年・34週目までも含めた過去5年間)
東京都における「インフルエンザ」の週単位報告数推移(今年・34週目までも含めた過去5年間)

分かりやすいように今年の30週目以降(要は直近)を赤丸で囲っている。過去5年間には無かった、夏季からの上昇傾向が確認できる。念のため過去データが用意されている1999年分までさかのぼってみたが、夏季のこの時期にこのような形を見せた前例はない。

グラフの両端、つまり冬季においては、毎年のグラフの形や幅をみれば分かるように(そして通常のインフルエンザの流行に関する過去の記事【計測史上最速のインフルエンザ流行宣言】)にもあるように、毎年流行傾向に差異がみられる。上限や横幅、山の形など多種多様だ。しかし夏場においては、これまで季節性インフルエンザが報告される傾向は無かった。ここで上昇を見せているインフルエンザ報告例のほとんどは、「新型インフルエンザによるもの」と考えて間違いない。

さらに気になるのが、各週の報告数全体における若年層の割合。通常の冬季流行時におけるインフルエンザの報告数の年齢階層比率と比べると、10代-20代、特に15-19歳の層の割合が多いように見える。一方で(元々少なめなのだが)高齢者の報告数は極端に少ない。

東京都におけるインフルエンザの報告数(年齢階層別、該当週合計に占める割合、2009年1-6週と27-34週)
東京都におけるインフルエンザの報告数(年齢階層別、該当週合計に占める割合、2009年1-6週と27-34週)

東京都におけるインフルエンザの報告数(年齢階層別、2009年27-34週)
東京都におけるインフルエンザの報告数(年齢階層別、2009年27-34週)

最新の2009年34週では、9歳未満の患者数割合が増加している。まだ報告数そのものが少ないので「ぶれ」の可能性もあるが、30週以降少しずつ9歳未満の患者数割合が増加傾向にあるのが気になるところ。また、相変わらず30歳以上の報告数は季節性インフルエンザと比べると少ない。

一部の小中学校では夏休みが終わり第二学期の学校生活が始まっているという話を聞く。、当然、学校経由での感染拡大は避けられない。現状では一人ひとりがうがいや手洗い、無用な人混みに足を運ぶことを避ける・マスクを欠かさない、体調不良時には「電話で連絡を入れて相談した上で」医療機関におもむくなど、季節性インフルエンザとほぼ同じ対応をしっかりとこなすことで、感染拡大は最小限に抑えられる。これらの手立てを学校で繰り返し、耳にタコが出来るくらい啓蒙を行うことが欠かせまい。

正しい情報の取得や注意深さは欠かせないが、同時に必要以上に慌てたり不安になることも無い。季節の違いで現在冬季にあり、流行が進んでいるオーストラリアをはじめとする南半球の国々では、それらの方法で対処しているのだから。